シン・ウルトラマンを観て安心して他人の感想を読んで、わかるわかると共感したり、そういう感じ方もあるんだなあと驚いたり、なんやこいつ人間性終わっとんなと不快になったりしているのだけど、めちゃくちゃ見かける感想で一つだけ突っ込みたいことがある(ネタバレなし)。

シン・ゴジラを期待したらなんか違いましたみたいな感想。

まず、シン・ゴジラを期待するな。予告編見たら全然違うのわかるでしょ。ウルトラマンでシン・ゴジラみたいなシリアス気味のポリティカルフィクションやれるわけないでしょ。

予告編見たらわかるでしょというのは大怪獣のあとしまつの時も書いたと思うのだけど(書いてなかったらごめん)、もはやシン・ゴジラ的なものを求めすぎて目が曇っているのではないか。あとしまつは明らかにコメディ映画だったし、シン・ウルトラマンは明らかにコミックヒーロー映画だった。

試しにもう一度シン・ゴジラの予告を観るとわかると思うけれど、コメディもコミカルも微妙な演技もほとんどなく、BGMのみでスケールのでかい描写、シリアスな政治劇映像を映しており、明らかにシリアスなディザスター・ポリティカルフィクションとしてのジャンルを示している。強いて言えばセリフがなくとも石原さとみのキャラに不安なコミカルさを感じるくらいだ。

あとしまつは普通にギャグ飛ばしてるし政治家の演技も見るからにコメディ調なのがわかる。ナレーションもキャッチコピーも緊張感がなく、最後の命名シーンは明らかにおふざけだ。こんなノリでシン・ゴジラ(のその後的なポリティカルシミュレーション映画)をやるつもりがあるわけもないし、できるわけもない。

シン・ウルトラマンは明らかにウルトラマンの人間ドラマをメインとした予告内容になっている。まあ前半だけならまだ後述するようなウルトラマンという未知の存在に対するポリティカル・フィクションを期待できなくもないのだけど、後半は米津玄師の主題歌に合わせてウルトラマンの人間ドラマに主軸が当てられている。まずその時点でシン・ゴジラとジャンルが違うし、構成からして典型的なコミック実写化の予告だ。

あとこれはわかりにくいが、巨大生物の映画なのに映像のスケール感が小さい。特撮ドラマ感はよく出ているが、シン・ゴジラのようなスケール感は全くなく、この時点で現実的再解釈が成されておらず、ちょっと(シン的なウルトラマンを求めるなら)期待は持てないだろう。

まあ、冒頭2分くらいを見て「おっ、シン・ゴジラ路線なのか?」と期待しちゃうのはわかる。それっぽさ出してるからね(あれが庵野節と言うやつなのかは知らないけど)。

現実の災害のメタファーとして描き得るゴジラと違って、ウルトラマンは完全にコミックなのだから、もしもウルトラマンでシリアスなポリティカルフィクションをやるのであれば、ウルトラマンをコミュニケーション不能な存在として描いて、人類がどう味方として受け入れて理解していくかを長々とやるしかないと思う。それを期待してた人もいるかもしれない。

ただそれすら難しい。ウルトラマンの見た目がコミックすぎるから、どうしてもバカバカしい雰囲気が出てくる。

シン・ゴジラはコミカルな要素をある程度排除できたから受け入れられたのであって(そもそも初代ゴジラからしてそうだし)、ウルトラマンはあの見た目で、人類を守って怪獣と戦うという原則を守る限り、良くも悪くもコミックヒーローとしてのウルトラマンにしかならない。

ちなみにゴジラは災害のメタファーとして描けると描いたので、ウルトラマンだって神なんだと言いたくなる気持ちはわかるのだけど、オタク以外はウルトラマンを神のメタファーと見ることは出来ない。あくまでヒーローだ。神という見方は余りにもハイコンテクストすぎる。

あるいは、ウルトラマンの神性を深く掘り下げて一般に明示する映画であれば、それが面白いかはともかくとして、コミカルではなかったかもしれない。シン・ゴジラみたいな……という言葉の裏でそのレベルの再解釈作品を求めてた人もいるかもしれない(シン・ゴジラみたいなというのは人によって割と意味が異なる)。

でも予告の時点でそんな映画ではないことはわかりきっていた。

そもそも括弧書きで今しがた書いたように、「シン・ゴジラみたいな」ってなんなんだよという疑問がある。内容は置いといてもシンだからシン・ゴジラを期待すると言うならシン・仮面ライダーにもシン・ゴジラを期待するのか。

シン・ウルトラマン(あとついでに大怪獣のあとしまつ)は個人的には評価の高い映画ではなかったけれども、もしも一般的な評価として「シン・ゴジラを期待して見たために期待外れだった」ということで余計に楽しめなくなるのであれば、それはちょっと作品が可哀想だと思う。

あと付け加えておくと、シン・ゴジラも別に個人的には評価が高い映画ではない(蒲田くん上陸シーンと最初の熱線シーンが魅力の9割だと思っている)ので、なぜそこまでシン・ゴジラに執着して何にでも引き合いに出す人が多いのかというところも、本質的にはよくわかっていないかもしれない。なんでですかね……。

まあただ、シン・ゴジラはエンタメ性はかなりあったので、シン・ゴジラ(くらいのエンタメ性)を期待した、というならわからんでもない。