映画を観た。劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師。12月22日、TOHOシネマズ立川立飛にて。

オススメ度★★★☆☆

忍たまファンには星5。

忍たま乱太郎は子供の頃に見ていたくらいで、キャラも生徒たちは大半の区別がつかない(多少の復習はしたけれど)。
あと、前作にあたる忍術学園全員出動!の段は当時観た。13年も前の話なのでもう覚えていないけれど、前作と比較してだと、前作の方が面白かったような気がしないでもない。

実際のところ、ストーリーはややシリアスとはいえあくまで子供向けのシンプルかつゆるいもので、それに戦災孤児のバックグラウンドを加えたという感じ。きり丸が戦災孤児なので。(あと、土井先生は豪族出身で家が滅ぼされたらしい)
なので大人の鑑賞に耐える作品かというと疑問は残る。忍たま乱太郎のギャグ自体も子供向けなので、子供世代とファン中心の劇場がクスクス笑う中、自分はぽかんとしているということが少なくなかった。
いや、ギャグの面白みはわかる。自分も子供の頃忍たま乱太郎をよく見ていたのだから。ただ、それと笑えるかは別の話だ。ニコッとはできるけど。

目立って残酷な描写もなく、一年は組の活躍はコメディをベースとした雰囲気なのだけど、戦場の描写は彼岸花を血、カカシ?などを死体の代替として戦場を表現していて、子供向けの範囲内で極力残酷描写を排除しない意図が感じられた。これは良かったと思う。子供が見たら意味がわからないとは思うけれど。
ただし、忍者同士の戦闘で出血描写はある。

その戦闘描写はアクションたっぷり、武器使いも多様な見応えのあるもので、テレビの忍たま乱太郎にそもそもシリアスな戦闘描写があるのかどうか記憶にないけれど、バトル系の作品と比較しても見劣りしないものがあった。というか、コメディ系の作風にもかかわらず、彼らがやっているのはどう見ても殺し合い(あるいは殺し合い一歩手前)なので、コメディ部分との落差も相まってその辺のバトル作品よりかなり緊張感がある。
コメディ作品において一転して殺傷武器の恐ろしさを描くというのは、最近別作品でも似たようなアプローチがあり(ネタバレ防止のため作品名は伏せる)、そちらでもかなり手に汗握るシーンになっていたのを思い出した。

以下ネタバレあり。

六年生と天鬼の戦闘は非常に見応えがあってよかった。命のやり取りという感じで緊張感もすごくて、今作の最大の見所のひとつだと思う。
雑渡と利吉の戦闘も、空中で動きすぎだろとは思ったけど、カッコよかったのでよし。(空中バトルというとどうしてもシン仮面ライダーの悪夢がよみがえってしまい見方が辛くなる)
尊奈門と土井先生の戦闘は土井先生が圧倒的優位なので緊張感がないものの、かっこいい戦闘ではあった。

土井先生が八方斎のハゲ頭に頭をぶつけるというのはあまりにも迂闊な気がするが(忍たま世界の忍者なら空中で防御行動くらい取れたと思うのだけど)、あるいは水面に写った満月にちょうど重なったがために、それと見間違えて防御行動を取らなかったのかもしれない。

そのせいで土井先生は記憶喪失、八方斎は残虐人格化するのだけど、八方斎って前も残虐化してなかったか?前作か?めちゃくちゃ既視感があった。なんか前もまつ毛ニョキニョキしてたような……。
まあ、とか言いつつ、終盤残虐化が解けるまで、八方斎が残虐化してることにはまったく気づかなかったけど。どういうノリのキャラだか忘れてたからこのくらい残虐性あるのかと思ってた……。

しかし、天鬼の正体が土井先生というのは見る前から明らかなので、そこにもう少し仕掛けがあるのかと思ったら何もなかったのには少しがっかりした。土井先生だけど何らかの事情があるとか、実は本当に土井先生ではなく土井先生と因縁があるとか、そういうひとひねり、謎があるのかと思ったら、記憶喪失とは。一番説明が要らず手っ取り早いけど、殺し合いの原因になるにはコメディすぎる。
まあ、ひねったところでそれが記憶喪失より面白くなるかと言われたら、一概にそういうわけでもないとは思うのだけど。

ラスト、きり丸で無理やり泣かせにかかるのはズルイ。は組、きり丸が土井先生のために泣きながらギャグ連発してるのは今思い出してもウルッと来てしまう。反則です反則!単にきり丸が泣いてるだけならもらい泣き程度だけど日常の象徴たるギャグを連呼させるな!そういうの弱いんじゃ!
シリアスなシーンであえてコメディを組み込んで落差を作って泣かせにかかってくるのは調子が良かった時の映画クレしんに通ずるものがある。

で、これは毎度の事ながら自分の読解力が低いからだと思うのだけど、彼岸花の戦争描写ときり丸の孤児描写を差し込んだ理由がよくわからなかった。雰囲気で受け止めたけど。
今回のストーリーが、端的に言うと土井先生が戦争を起こすという話なので、戦争とはどんなものかを描いておく必要があったのかもしれないし、戦争の被害者であるきり丸を強調しておくことによって、土井先生、きり丸、戦争という三者の関係性を暗に示しておくような効果があったのかもしれない。

まあそんな感じで、どうしても子供向け感が強くて自分は対象外なのかもと思ってしまった面はあるけれど、子供向けの描写自体には懐かしさのようなものを感じてちょっと涙腺が緩んでしまったし、アクションは良かったし、きり丸にまんまと泣かされたので、今年観た映画の中ではかなり上位に置きたい気持ち。