2023年6月
リバー、流れないでよを観た

リバー、流れないでよを6月25日(日)に観た。あまりこの手のスケールの映画は観ないのだけど、2分のタイムループというアイデアがとにかく面白くて、観ることにした。
2分の繰り返しで何ができるんだ!?ストーリーを紡げるのか!?という疑問がそのまま観る動機になる。
ちなみにヨーロッパ企画の作品は名前こそよく聞くものの自分自身は一度も見た事がないので、そういう意味でもちょっと楽しみだった。
そんなわけで簡単にネタバレあり感想を書いてみる。
初めはネタバレなし感想。

2分ループというワンアイデアでひたすら回すという感じで面白かった。
ループ中はとにかく2分間をワンカットで回し続けるので、ワンカット2分間ずっと演技し続ける役者の凄さみたいなものも感じる。観ていてその一芸に感心しきりだった。
また、ストーリーの時間感覚がリアルタイムと一致しているので、逆に言うと時間を操作して作品のリズムを弄るということが出来ない制約の中で、飽きないように不自然にならないようにストーリーの起伏を作るというのもすごく良くできていた。

で、まあつまるところこれって映画で舞台演劇をやっているようなものなんだと思う。舞台の上では場面転換が起こるまでワンカットで演じ続けることになり、そのワンカットの中で起こるドタバタの中に面白さがある。要するに2分間ごとに場面転換が起こる舞台のような感じだ。
そう思って観れば役者の演技の方向性もコメディ系の演劇を観ているかのようだ。ラストに出てくる小道具?も舞台セットみたいな質感だ。
鑑賞中の早い段階で「あ、これ舞台だな」とわかったので、そういう風なバイアスをかけながら観ていた。そのバイアスがないと前述の小道具?が出てきた時にがっかりしたかもしれない。
なので、前述のとおりワンカットの演技に感心したりストーリーの構成に感心したりしたけれど、もともと舞台が主戦場のヨーロッパ企画からすればお手の物だったのかもしれない。
思えば、イニャリトゥ監督のバードマンなんかは全編ワンカット風の撮影でアカデミー賞を取ったけれど、あれは舞台演劇の話だった。そういうことだったのか。ひょっとして。

ただしいくら2分ループが舞台っぽく見えるからといっても、このアイデアは舞台では実現できない。場面転換のたびに初期位置に戻ってそこから限られた時間で行動しなければならない面白さは舞台では演出できないと思うし、2分という絶妙な細かさだから面白いのだけど、舞台でやるには2分は短すぎると思う。仮に2分ごとに暗転して初期位置に戻っていたら、見てる側としてはけっこうタルくなりそうなものだ。
まあ、寡聞にして知らないだけで、舞台が先にあったりしたらごめんなさいなのだけど……。ヨーロッパ企画だと、確か曲がれ!スプーンとかは舞台劇が先にあってその後映画化してた気がする。

曲がれ!スプーンと言えば舞台音楽が元たまの滝本晃司さんだったのだけど、今作の音楽聴いてて滝本さんっぽいなあと思っていたら、やっぱり滝本さんだった。滝本さん、映画の音楽は初めてなのでは?違ったらごめん。

以下ネタバレあり。

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怪物を観た

映画「怪物」を観た。手短にネタバレあり感想(最初はネタバレなし)。

ジャンル的には、ミステリー映画でいいのだろうか(そうでもない?)。主人公の子供を中心に不可解な出来事が次々に起こり、その謎が解き明かされていく作品、と言えなくもない。ミスリーディングを誘う仕掛けもある。とくべつトリックというようなものは無いのだけど、謎に振り回されるストーリーが好きならおすすめと言えるかもしれない。個人的にはかなり楽しめた。

とはいえ結局は関係性のヒューマンドラマに帰結する。その面でも十分楽しめたし味わい深い作品だと思ったので、そういうのが好きな人にも良いかもしれない。ただし全編暗いトーンで話が進むのでそこは注意。まあ予告編を見て明るい映画と思う人もいまいとは思うけれど。
あと結構ドラマ的に脚本が難解で理解できてない部分が多々あると思うので、そこも注意して観てほしいかな。

映画の構成的にネタバレ抜きで語れることがあまりないので、以下ネタバレありで語る。

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ザ・フラッシュを観た

映画フラッシュを観てきた。前半ネタバレ無し後半ネタバレありで感想を書く。(予告編程度の内容はネタバレなしとする)

この映画のことは楽しみ半分不安半分で公開を待っていた。

楽しみなのは、これまでのエズラ・ミラーのフラッシュが魅力的だったのと、大好きなマイケル・キートンのバットマン再演、ベン・アフレックのバットマン再演、といったコラボレーション要素だ。

不安なのは、DC映画群の右往左往のちょうど交差点とも言える位置にある映画であるため、映画自体の扱いが微妙なところと、コラボ要素やタイムトラベル・マルチバースの世界観をきちんと処理できるのか、という、要するに期待の裏腹である。これまでが魅力的だったから、コラボも魅力的だから、実際それらがどう処理されるのかが不安になる。後者に至ってはあれだけ手を広げたMCUですらだいぶ持て余して単独作の質に影響している印象で、一方で最近単品では快作続きとはいえ依然としてユニバース展開にゴタゴタして一旦のリセットまで決まったDCでは、なおのこと心配だ。

つまりはそのいくつかのキーポイントで期待に応えてくれるか期待外れか、二つに一つ。快作か凡作か。愛してやまないキートンバットマンまでひっぱり出しておいて凡作では納得できない。

その不安は完全に杞憂として消し飛んだ。文句なしの快作だ。アメコミヒーロー映画に求めてたものが全部あると言っても過言ではない。
コラボ・マルチバースの処理も見事。華やかなお祭り感がありつつ、シナリオ上の扱いも過不足なく鼻につかない。
コラボに注力すると単独作としての完成度に欠けがちで、キャラクターの掘り下げがおざなりになりがちだけれども、今作はフラッシュという一ヒーローの作品として全く申し分ないストーリーに仕上がっている。そもそもフラッシュが時間遡行できるのがキーになっているストーリーなので、常にフラッシュ自身の変化や選択がストーリーの軸にあるため、話がブレていかない。
マルチバース・クロスオーバーものとしては一つの到達点と言える完成度だと思う。今後これ以上のもの出るのかしら……。

作品のトーンも多彩で、重ためのストーリーを軸にしながらも細かいユーモアとアクションの爽快な演出でいい気持ちにさせてくれる。まあ、統一感がないということもできるし、めちゃくちゃ深刻なシーンでギャグ系の小ネタぶちこんできて感情が少し迷子になったけれど。

音楽も最近観た映画の中では群を抜いて良い。かなり印象的でエモーショナルな曲の数々、おなじみのテーマや洒落た歌モノなど、サービス満点で気分を盛り上げてくれる(楽しい方にも緊迫感のある方にも)。縁の下の力持ち的に音楽を使う映画もいいけれど、アメコミ映画、お祭り映画ではこのくらい前に出て気持ちを引っ張ってくれてもいい。
メインテーマらしい印象のあるものはAre you actively eating that candy bar?という曲とRunという曲で、公式動画で上がってるので聞いてみて欲しい。後者は時間遡行を連想させる印象的なピアノリフがとにかくエモーショナルで感動的だ。前者はダニー・エルフマンみを感じる素早いストリングスから、後半になるとフラッシュらしい電子音が展開する。両方ともとても今作らしい曲だ。
おなじみのテーマなら、バットマンのテーマ(I am Batmanという曲名)が公式動画で上がっている。本当にバットマンとかスパイダーマンあたりのダニー・エルフマン風味を出すのが上手いし、それでいてオリジナリティをきっちり入れてるのが良い。ちなみにBatdoneonという曲がこれをベースに疾走感のあるアレンジになっていて、ゲーム好きの琴線に触れそうなトーンの曲になっている。
YouTubeプレミアムに入っているから映画のサントラの類をすぐに聞けるのがありがたい。(大概の洋画サントラは公開前に既に公式アップされている)と思ったらフラッシュはプレミアム入ってなくても全曲?公式動画でアップされてた。

以下ネタバレありで語っていく(グラデーションはつける)。
ちなみにややこしいので、元々のバリーをバリー1、2人目の若いバリーをバリー2とする。

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