2024年7月
化け猫あんずちゃんを観た

化け猫あんずちゃんを観た。7月22日、TOHOシネマズ アミュプラザおおいたにて。

見る前はけっこうスペクタクルな展開もあるのかと思っていたけど、全体的に落ち着いたトーンの作品だった。
ロトスコープを取り入れた独特の作画も見所。絵がすごいなあと思いながら見ていた。

あんずちゃんの話と言うよりは、寺に預けられた女の子かりんの話になっており、またこのかりんが結構ひねくれているので、若干のとっつきづらさはあった。

いい話ではあるのだけど、予告編がややスペクタクルっぽく見せていたこともあり、ちょっと肩透かしといった感じ。これは自分の先入観が悪い。
★★★☆☆

2024年上半期公開観た映画ランキング

さて、2024年も年間ランキングをつけてみようと思うので、その前に上半期公開映画のランキングを作ってみる。
面白さ指標として個別の感想には星評価をつけてみているのだけど、ランキングの方はそれらを一切考慮せず、現在の考え方で一から作ってみる。
ちなみに今回挙げるのはどの映画も楽しめたので、そこは安心してほしい。
個別のもう少し詳しい感想は個別の記事で。まあちょっと今年は書く時間がなくてメモ程度になってしまった作品も多いのだけど。このランキングも含めて自分内メモなので。気楽に手軽に書いていきたい。

観た上半期公開映画(1月〜6月公開)とそれを観た時期一覧。計20作品。

1月
アクアマン 失われた王国
3月
マダム・ウェブ
落下の解剖学
4月
オッペンハイマー
DUNE 砂の惑星 PART2
ゴーストバスターズ フローズン・サマー
ゴジラxコング 新たなる帝国
5月
成功したオタク
6月
劇場版ウマ娘プリティーダービー 新時代の扉
劇場版名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)
関心領域
マッドマックス フュリオサ
劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:
トラペジウム
ルックバック
7月
映画それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン
悪は存在しない
数分間のエールを
ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ
クワイエット・プレイス:DAY 1

こうして見ると、とびぬけて面白かったとかつまらなかったみたいなのがない。
ランキングを作る上では困った感じだ。
まあお遊びということで適当に作るか。

1位 関心領域
同率1位その1。二回観た。
終始淡々としていながらも、不穏さと緊張感が漂う映画。
音楽含めた音が非常に効果的で、劇場で観る価値がめちゃくちゃある。
こういう言い方するとアレだけど、意外と観ていてストレスがかからないのも気楽に観れて良い。

1位 ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ
同率1位その2。二回観た。
緩やかでレトロで暖かいヒューマンドラマ。
劇的なことが起こって泣けるとかそういうタイプの映画ではないと思うけれど、じんわりと心に余韻を残してくる。
一つ一つの出来事の積み重ねが大きな変化になるタイプの話。
役者陣の演技もいい。特にドミニク・セッサが好き。
めちゃくちゃ感動したというわけでもない(じんわり効いた)ので、1位にするか悩んだけど、比較してみて関心領域より下にはさすがに置けないなあと思った。

3位 オッペンハイマー
終始緊張感の漂う映画その2。こっちの方がストレス度は高い。
お得意の時系列シャッフルで混乱させられて、やたらひねった高尚な偉人映画なのかと思いきや、エンタメ感のあるドラマチックなスリラー映画だった。ぐるぐる振り回されて面白かった。

4位 アクアマン 失われた王国
同率4位その1。
王道ハリウッドバカ映画枠。
あんまりすごい映画というわけではなく、前作からすると映像美的に見劣りはするし全体的なスケールも小さく見えるものの、十分に楽しめる。
DC映画は個人的にはMCUと比べるとけっこう打率高かったので、これで一旦ユニバースの区切りとなると今後が心配。

4位 落下の解剖学
同率4位その2。
関心領域に引き続きザンドラ・ヒュラー。同時期に二作も当たるもんですね。
何が真実なのか、誰が信じられるのか、どうなってしまうのか、ハラハラして観られる。

4位 劇場版ウマ娘プリティーダービー 新時代の扉
同率4位その3。
ウマ娘をほとんど知らなくても一応大丈夫だった。まあいろいろ見る側が譲歩する必要はあるけれど。
アニメチックな演出と燃えるレースが続くので、終始飽きずに楽しめた。

4位 トラペジウム
同率4位その4。
東ゆうのキャラクターが面白い。
序盤から中盤まで、子供たちの未熟さで何か良くないことが起こりそうな独特のハラハラ感があり楽しめる。
東ゆう以外のキャラクターが薄いけれど、東ゆうだけでお釣りがくるし、薄いことで生じる後先不安感もあって良い。

4位 映画それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン
同率4位その5。
ばいきんまん補正あり。二回観た。
ばいきんまんに肩入れする子供だった身としてはかなり我が意を得たりといった感じで良い。
敵がやたらめったら強いのも、その正体も良い。
良くも悪くも子供向けのストーリーだからかなりこっちで譲歩する必要があるけれど、ばいきんまんのキャラクター性の掘り下げという意味ではよく出来ている。

4位 悪は存在しない
同率4位その6。
落下の解剖学となんとなく鑑賞後の感じが似てた。
淡々としてはいるけど、ちょっと胃の痛くなるストーリーではあり。一方クスッとできるところもあり。けっこう楽しめた。

4位 クワイエット・プレイス:DAY 1
同率4位その7。
クワイエット・プレイスシリーズは全然見たことがなかったけれど十分楽しめた。猫絡みのネタバレ踏んでたけど。
末期患者という主人公の設定がいい。
ビックリ演出多めなのがちょっときつかった。

11位 劇場版名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)
バカ映画。いつものコナン映画……とは、前作しか見てないので言えないけれど、多分いつものコナン映画だと思う。
コナン映画はノリも極めて軽いのでニコニコして観られる。
アクションの見応えもあり、ストーリーもキャラもバカで楽しい。

12位 ゴジラxコング 新たなる帝国
コナンに匹敵するバカ映画。モンスターたちがなんだかかわいく見えてくる。
敵役とかに見どころはないものの、何も考えずに見られてストレスフリー。
コナンよりちょっと笑いどころが少ないかなと思ったので順位を落とした。

13位 ゴーストバスターズ フローズン・サマー
同率13位その1。
普通に面白いけど、ニューヨークに帰ってきてもこんな感じだと、ゴーストバスターズというシリーズをどう楽しんだらいいのかよく分からなくなってきた。アフターライフは別の場所だったからまだ1・2と違ってても受け入れられたけど。
フィービー役が成長してしまって無防備系エロさが出てしまってるのは加点ポイントなのか、気が散るという意味で減点ポイントなのか。

13位 マッドマックス フュリオサ
同率13位その2。
まあまあ。見てる間はまあCGバリバリアクションって感じで楽しめるけど、長いわりに特に見たあと残るものがない。つまりはストーリーがあんまりピンと来なかった。
前作と同じものを期待するのは良くないし実際していなかったけれど、前作と同じくらい心に残る作品であることを期待していたので、ガッカリと言えばガッカリ。

13位 劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:
同率13位その3。
総集編。よくまとまっていて、テレビアニメと同じくらい面白い。
でももうテレビアニメは全部観ており、わざわざ何回も見てずっと最初と同じ面白さがあるわけでもないので、順位を落とした。

13位 ルックバック
同率13位その4。
原作が面白いから面白いのだけど、原作以上のものはない。
音楽なり演出なりでちょっと感動を押し付けてくるきらいがあり、気持ちが引いてしまった。原作は自分のペースで読んで噛み砕けたのに。
まあ、感動を消費させようという雰囲気は映画も原作もある程度同じな気もするから、この解釈でもいいのかもしれないけど。
作画はまさに神作画なのだけど、個人的には絵柄が苦手なシーンも多くて、差し引きゼロ。

17位 数分間のエールを
1時間かけたクリエイター系専門学校のCM感がある。
映像は見ていて面白いし、挿入歌も良いのだけど、話が表層的で乗り切れないのがちょっと。キャラも薄くて作劇の都合で役割ムーブしているように見える。

18位 マダム・ウェブ
同率18位その1。
普通に楽しめるけれど、とくにこれといって良いところがない。
VFXも微妙だし、ストーリーもなんかトンチキだし。
でもハリウッドの普通のアクション映画として見たら別に普通なので、まあ普通。いやちょい微妙かも。でも普通に楽しめる。
割引料金でフードとドリンク片手にダラダラ時間つぶしに観てちょうどいいくらいの感じ。

18位 成功したオタク
同率18位その2。
題材はとても興味深いのだけど、同じような内容を繰り返すので結構退屈だった。
題材はとても興味深いのでそこそこ楽しめたけれど。やっぱグッズのシーンがいい。

20位 DUNE 砂の惑星 PART2
こういうSF大河ドラマはストーリーとキャラクターに興味が持てないので苦手ということがわかった。
SF映画は映像だけでけっこう見てられるのでそこは良いところ。
ただどうしても興味が持てないと単調に感じてしまうのでそこはつらい。長いし。3時間近くあるのはきつい。

全体的に、すごくいい映画とかかなり微妙な映画というのがあんまりなくて、団子って感じのランキングになった。

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディを観た

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディを観た。7月13日と7月15日。大分シネマ5にて。字幕。

2回見た事からも伝わると思うけれどかなり良い映画。(まあ2回目は付き添いだけど、自分から勧めたようなもんなので)
70年代を舞台としてレトロタッチで緩やかに穏やかに紡がれる優しい物語。なので劇的な盛り上がりを求める人には向いていないかも。
小さな秘密が明かされたり、非日常的(タッチは日常的)な環境下で互いを思いやったりしながら、各キャラに少しづつ変化が積み重なり、次第に大きな変化をもたらしていく。
自分の理解は浅いとは思うけど、概ねそんな感じの映画。

今作の個人的MVPはアンガス・タリー役のドミニク・セッサ。整った顔に長身細身のルックスが魅力的なのはもちろんのこと、憎たらしく大人ぶってみせる反抗的な子供の顔から、幼い無邪気な子供の顔まで、そのグラデーションを見事に演じ分けてみせている。カメラの前に立つのも初めてというのが信じられないのだけど、映画は総合芸術なので、その助けもあるとは思う。

自分の中ではこの映画の軸にあるのはそれぞれのキャラの悲しみ、孤独に寄り添う物語だと思っていて、とりわけその中でも子供に対して大人が負う責任というのが主に描かれているように思う。子供が大人に学ぶように大人も子供に学んで変化していく物語ではあるのだけど、最大のキーになるのはやはりアンガスに対して大人がどう向き合うかだ。
まあそういう意味で、ホールドオーバーズは実質ブルーアーカイブ、なんて誇張オタク構文をツイートしてしまったのだけど、さすがにズレすぎかと思ってすぐツイ消しした。

面白さはまあ、とりあえず星四つかな。
★★★★☆

密輸1970を観た

密輸1970を観た。7月15日、大分シネマ5bisにて。字幕。

予告を見た印象として、気楽に楽しめるエンタメ作品だろうなと感じて観に行ったら、実際その通りの映画だった。
その通りというか、思ってたよりも軽くて、言語さえ日本語であれば、コメディ混じりの邦画アクション映画と言われても何も疑問に思わない気がする。
個人的には韓国映画には日本映画と違うものを求めているので、邦画と似たタッチの作風なのは若干期待はずれという印象。

水中を含めてアクションは見応えがあって緊迫感もあるし、ストーリーも二転三転して面白い(というか二転三転する上にそれぞれの思惑が絡まっててよくわからない)。
ただ、ある程度好きになれるキャラクターがマジで一人もいなかったので、ちょっと引いた目線で見ることになってしまった。

あと、1970年代の韓国の雰囲気ってこんな感じなんだ〜という面白みもあった。

星三つくらい。
★★★☆☆

クワイエット・プレイス:DAY 1を観た

クワイエット・プレイス:DAY 1を観た。7月14日、TJOYパークプレイス大分にて。字幕。

待ち時間に鑑賞。クワイエットプレイスシリーズは完全に未見で、音に反応するモンスターが襲ってくるホラー映画という認識くらいしかなかった。

ホラー・モンスター映画としてはそこそこで、特別これが感情に響いたというものはなかったものの、十分怖がることができたし、主人公の末期癌患者サミラを軸にしたストーリーもとても良かった。日々激痛と死の恐怖と戦っている主人公の極限状態での選択が本作を普通のモンスター映画とは違うものにしていると思う。
いわゆるビックリ演出がけっこうあったのは気になるけど。

ただ、この映画については主人公の猫の結末について致命的なネタバレをSNS上であらかじめ食らっていたのが痛かった。猫の運命についてもどうなるのかハラハラしたかった。
動物が酷い目にあうかどうかが観ない理由になり得る人に対して、良かれと思ってネタバレをしたようだけれど、関係ない人にとってははた迷惑だなと思う。

面白かったので星三つくらい。
最近星三つくらいが多い気がする。自分の中の基準が変わってきたのかもしれない。
★★★☆☆

数分間のエールをを観た

数分間のエールを、を観た。
7月3日、立川シネマシティにて。極上音響上映。

直前までこんな映画があることすら知らなかったのだけど、前日にアンパンマンを観に行った際、シアター内にサイン入り看板が飾られているのを観て、気になったので鑑賞。
ネタバレ薄めでダラダラと思ったことを書く。一応観る前に読んでも大事なとこ全部ネタバレされてるとかにはならないと思う。

観終わって、面白かった……と自信を持って言えない。いや、つまらなくはなかったのだけど。まあでも、多分面白かったかな。うん、面白かった。

主線の少ない2Dルックな3Dアニメとして、映像には独特の質感がある。初見だとちょっと違和感を感じるかもしれないが、映像だけでも楽しめる。聞けばblenderで作ったらしいので、そういう意味で新鮮味もある。
まあ、主人公の彼方のキャラデザ(顔)が好きじゃなかったけれど、夕先生の顔が良かったのでトントン。
音楽も後で触れるけど邪魔にならず、挿入歌は物語にも合ってて良い。

ただ、それ以外がどうも……というか具体的にはお話がちょっと……没入できないというか、冷めてしまうというか。
自分ではほとんどないことなのだけど、上映中にダルくなって時間を確認してしまった。

どんな映画だったのかというと、まあ悪い言い方をしてしまうと、露骨なクリエイター賛美作品といった感じ。
この作品にピッタリの感想がしばらく思いつかなかったのだけど、一時間かけた専門学校のCMみたいな感じだ。独特の映像の質感もあいまって、よりそんな感じ。

全体的にクリエイター讃歌を作るぞという強い意志を感じて、それがセリフや筋書きに表れている。のだけど、意志が強すぎて、セリフは口数が多く説明的なところと上辺を撫でるようなふんわりした感じになっているところがあるし、ストーリーも類型的なところがあり、展開から先に考えてキャラクターを役割に押し込めたような強引さを感じる。

セリフの一例を挙げると、「作ったもので人の心を動かしたい」というようなことを何回も口にするのだけど、人の心を動かすということが具体的にどういうイメージなのか、なぜ人の心を動かしたいのか、というのをしっかり提示してもらえてないからか、ふんわりした空虚なセリフに感じる。セリフだけが先行していて、そこからキャラクターの内面・イメージをつかみ取れない。公式あらすじでもタイトルっぽく使われているあたり、おそらく「作ったもので人の心を動かしたい」というのは今作のパンチラインの一つなんだろうと思うけれど、パンチラインだからといって機械的に入れてしまってる気がする。
自分もクリエイター賛美に傾倒した時期があるから思うのだけど、「作ったもので人の心を動かしたい」というのは一番格好がつく創作動機ではあるので、クリエイター賛美の作品でそれを使いたい気持ちはわかる。でも実際はシンプルな承認欲求とか、具体的な目標とか衝動があるもので、単に「人の心を動かしたい」というのは実際は何も言っていないに等しい。もしそう言いたいのであれば、上述したように、どう動かしたいのかなぜ動かしたいのかを明確にしておかないと、単なるカッコつけになってしまう。

そういうぼんやりふんわりしたセリフがある一方で、説明的なモノローグが細かく挿入されていて、セリフで伝えるぞという意気込みがすごい。こういうモノローグの使い方、CMとかでよくある。テレビから目を離しても内容がわかるやつ。

ストーリー展開も、まあ見え見えなので書いてしまうけど、中盤で彼方が挫折してしまう展開がある。それ自体はありふれたものだからいいのだけど、挫折する原因がにわかに信じがたいものとなっており、挫折させるという展開のために無理矢理キャラクターを動かした感が否めない。まあこれは彼方をMV作家にした時点でちょっと無理があったのかもしれないけど。
夕先生はとにかくストーリーの都合で不可解な行動を終始とり続けており、教師設定からしてかなり無理があると思うのだけど、ひょっとして学校で「あっあんたはあの時の!」展開をしたかったがために無理矢理教師にさせられたんじゃないか。知らんけど。

また、クリエイターを賛美するのは別にかまわないのだけど、作中の制作描写がどうも地に足がついていない感じがする。
MVは高校生が一人で短期間で二作並行して作るには無理のあるクオリティに見えるし、制作風景も特殊な空間でSFチックな操作パネルを使いサクサクと制作する比喩的演出がある。通常の制作風景ももちろんあるけれど、これといって印象に残らなかった。
全体的な印象として、MVにしろ歌にしろ、創作の泥臭いプロセスをすっ飛ばして結果だけを提示して「モノづくり」と言っているように見える。
泥臭い部分が描かれるのは外崎のスケッチブックくらいで、今作の「モノづくり」で唯一説得力のある動きをしているのが脇役の外崎、それもそんなに掘り下げて描かれない。

モノづくりという言葉が頻出するけれど、映像・音楽・絵画の分野で創作行為をモノづくりという言い方はあまりしないんじゃないか。知らんけど。(作っている人達は当然その分野の人たちなので本当にそう言うのだろうか……)
なので作中「モノづくりの世界で」というセリフが重要なシーンで言われるのだけど、そんな言い回しする!?という驚きだけが来て感動も何もなかった。
自分は分野が全く異なるのでわからないが、モノづくりなんてワード、メーカー向け就活の時にしか使った記憶がない。

モノづくりを続けるにしろ諦めるにしろ、作中全編に漂うモノづくりへのあまりにも無邪気な信頼が、モノづくりに携わっている人の視点と言うより、これからモノづくりを志す人の憧れの視線に近いと思った。映画を作っている人達は前者のはずなのに不思議だ。

ライブの際の描写についていくつかちょっと違和感があって(あんな通路長いの見たことないってのは誇張演出なので置いといて)。
例えば、外崎が夕先生をトリの前座扱いだと言うのだけど、ああいうブッキングでOAと特に書いてない限り、前座扱いだと思ってる人は普通いないと思う。そりゃアンコールはトリの出演者にかかるけどさ。まあ外崎はライブ来たことないような雰囲気だった気もするから、そういう認識でも不自然じゃないか。
ライブ中の客についても、夕先生の出番であれだけの密度で人がいるということはそこそこ人気があって固定ファンもついているはず。画面外でアホほどヘドバンかジャンプしてるようなファンが一人くらいついててもおかしくない。なんか劇中では箸にも棒にもかからなかったみたいな扱いなのでギャップを感じた。映画の中では人気の指標として主にYouTubeの再生回数やコメントが映されていたけれど、YouTubeの再生回数だけじゃなくて目の前の人を見よう。目標とモチベによるけどさ。(まあその辺はっきりしないから夕先生が音楽やめるも続けるもふんわりしてるんだけど)
どうでもいいけど100曲も作ったならライブでやれる曲だけでもレパートリーかなりありそうだし、ファンから音源化を待望されていそう。

モノづくり賛美の作品ということで、音楽についても触れておくと、音楽は挿入歌以外特に印象に残らなかった。別に悪いことではない。作品に溶け込んでいたということで、邪魔するより100倍マシだ(邪魔だったルックバックを思い出しながら)。
挿入歌はどれも良かった。記憶が確かなら「未明」以外に2曲流れたと思うのだけど、もうちょっとしっかり聞かせて欲しかった。サブスクで聴き直してみているのだけど、「ナイト・アンド・ダーク」なんてイントロしか流れなかった気がする。あれ、「ナイト・アンド・ダーク」じゃなくて「ある呪文」の方か?ていうか「未明」以外に4曲もあるじゃん。記憶力……。
挿入歌の中だと「ある呪文」がちょっと昔のポップ感があって一番好きかも。「アイデンティ」とかめっちゃボカロP感ある。いや夕先生の挿入歌担当のVIVIさんはボカロPだから当たり前だけど……。
ただ、歌自体はいい歌だと思うのだけど、こう言ったらあれなんだけど、劇中で地道にライブとかしてて売れないのも納得してしまう感じの作風だった。というかこういうジャンルの歌が跳ねるためにはどこでファンを集めたらいいのかわからない。昔はこういうジャンルは下積み時代がよく見えないままいきなりメジャーデビューとかしてたようなぼんやりした印象。今時はボカロかなんかで作って音源をMV付きでネットにアップするのが王道な気がする。そういう意味で、映画のストーリーにはかなり合っていると思う。(歌と関係ないけど、やたらセンチメンタルなライブMCもなんか売れなさそうという感じがしてしまった)
ちなみに夕先生はアップされたライブ映像が伸びないのを気にしていたふうな描写があるけれど、ライブ映像はね……伸びないぞ……。この作品のそういうとこはしっくり腹に落ちる。

エンドロールのフレデリックの主題歌は、作品に雰囲気がよく合っていたと思う。
まあ、そこは夕先生の歌で統一するべきだろ、特にエンドロールは、という意見も多分ありそうだしよくわかる。
ただ、別にこれで悪いとは思わない。この作品の鑑賞後の余韻にはこれはこれで合っていると思う。まあ、夕先生の歌だった方がベストだとは自分も思うけど……。

まあ色々書いたけど、なんだかんだ楽しめたということで一旦星三つ。
★★★☆☆