映画を観た。室井慎次 敗れざる者、室井慎次 生き続ける者。12月22日、TOHOシネマズ立川立飛にて。
前後編で立て続けに観たのでまとめて文章にする。

前編オススメ度★★☆☆☆
後編オススメ度★★☆☆☆

前編のオススメ度は前編だけ観た時を想定。
後編のオススメ度は前編を観た前提。
まず前提として、最低限楽しめたということは書いておく。
別につまらなくはなかったけど、これ作るの誰か止めろよ!スタートがもう間違いだから、そこからつまんなくはないくらいのもの作られてもダメなんだよ!なんでこの企画通るの!?という気持ちは否めない。

踊る大捜査線シリーズはとりあえずドラマ版を一通りと、劇場版1と2、あと真下正義を観たことがある。もう全然覚えていないけれど。
劇場3とFINALはなぜかなんとなく観ていない。本当は予習しておこうかと思ったのだけど、家で映画を観る習慣がないのもあり、結局今日までに観られなかった。

今作も別に強く観たかったわけでもないので、なんとなく見逃していたのだけれど、やはり踊るシリーズ復活は劇場で見ておきたいなという気持ちもあり、また、今日が今年映画を見られる最後のチャンスかもしれないので(厳密にはあと一回ソニックを見に行く予定だけれど)、ふと気が向いてあわてて見に来たというところ。
ただ、あまり観たい気持ちが強くなかったことからもわかるとおり、そんなに内容に期待はしていなかった。なんなら面白くなさそうだなと思っていた。酷評の噂も聞いてはいたので、駄作を楽しみにしていた部分もある。実際見てみると、そこまでの駄作とは感じなかった。普通に見られる。問題点は作品の出来とはもっと別にある。

前編を見た感じだと本当に何も終わらないというか、ほとんど何も始まった感すらない。
同じような前後編の前編であるスパイダーバース2を見た時は大概のことを次作に投げたとはいえ、一つの物事については一つの決着のようなものがついたので、一応一本の映画としてもまあいいかと思ったのだけど、室井慎次 敗れざる者はまず一本の映画になっていないので、本当に前編といった感じだ。
だから前編だけだと大した感想がない。

強いて言うなら描写が非常にステレオタイプで表層的というか、先に筋書きが作られてそれに当てはめてキャラクターを作って動かしている感じがする。キャラクターの言動や行動に特に人格的な理由を感じない。理由なき行動を散発的に見せるだけでなんとなく物語が進んだ感を出そうとしているけど、実際にはあんまり話が進んでいない。
通常の映画がスタート1でゴール100までの物語を紡いでいるとすれば、この映画はスタート1でゴール5くらいの物語を散発的に引き伸ばして見せてくる感じだ。ゴールが近いので話が大したことにならない。足し合わせて100にもならない。
とはいえ室井慎次というキャラクターと本作のストーリーの組み合わせは、全体的にどういう方向に向かうのか全く予想できないもので、たとえその都度変な話を見せられたとしても、次どうなるのかわからない緊張感のようなものがあり、それは良かった。

その他気になったところ。
巡査のキャラが異常にうざい。
前編で撒かれた種が、里子、娘、事件、恋愛、田舎、どれも面白そうに思えない。
リクの顔が時々変わっているように見えたのだけど、どうやら双子で演じていたらしい。正直なところちょっと違和感があった。

音楽が全体的に上滑りしていて、没入を阻害するという程ではないけれど、あんま盛り上がらないこんなとこでその音楽流すのか……とか、なんかこの音楽チープに聞こえるな……とかそんな印象を持ってしまって、がっかり感がある。

とここまでがネタバレ抜きの感想。
以下ネタバレあり。

これは踊る大捜査線ファンはブチ切れだろうと思う。さして思い入れのないはずの自分もこのオチはちょっと受け入れがたい。
ネタバレありと書いた直後にオチを書くのもアレなので後に回すけれど、これは企画のスタートがもう間違いだと思う。

内容としては、上述のとおりスタート1ゴール5くらいの話を散発的に見せられた、という気持ちしかない。
事件は非常にしょうもなくすぐ終わるし(こんな事件にあのBGMを使うのが本当に本当にもったいない)、タカの母の事件は被告と対面したらすぐ解決するし、タカの恋愛はすぐBSSになって特に後に残るものもなく、田舎の連中は急に本当はいい人でしたと吐露し始めるし、杏との関係は曖昧なままなぜかショットガン撃たせて改善するし……。
それらを見せられても、総体として何を描いているのかが見えてこない。それがある種恐ろしくもあり、独特の緊張感を持ちながら鑑賞していたのだけど。
小さな星だけ見せられて、正解の星座が描けない。まさか星座じゃないなんてそんなことは……。

レインボーブリッジをやたら引き合いに出す割には、室井慎次の過去として特に物語上の意味合いも与えられていない。
そもそも今作の室井慎次と過去の室井慎次を結びつけるリンクが自分の中に見つからなかった。散々過去のカットを差し込まれておいて、それと今の室井が地続きにはあまり見えない。今の室井に過去の室井の面影を見せて欲しかったが、そんなシーンはなかったように思う。

田舎住民や弁護士、児童相談所職員といった、感情的裏付けが見えない型にはまったキャラクター。
このあたりもけっこうキツイところだった。

とはいえ映画としては不思議と嫌いになれないというか、楽しめないこともなかった。あまりにも変で逆に内心ツッコミながら楽しめたという面もある。
あとは観ているうちに室井と里子たちの暮らしを好きになれたということもあるかもしれない。色々とバラバラな作品だったけれど、室井と里子の暮らしと関係性を描くことだけは一貫していた。室井が田舎に住んで里子を育てることにした経緯や志を考えれば、そこが時間をかけて描かれていて、観客(自分)にこの家庭を好感を抱かせることができたなら、それはこの映画の成功と言えるだろう。
まあ、里子それぞれのキャラの好みは別として(自分はリクのキャラがめちゃくちゃ苦手)。

そしてオチだけれど、まあ、非常にしょうもないというか、こんな適当なとってつけたようなご都合主義的展開があるのだろうか。あった。
物語が99%、いや100%終わっているところから、逃げた犬を追いかけて遭難死という展開になるのはさすがに適当すぎる。シンスケお前普段なら逃げないだろ。室井も普段なら追いかけないだろ多分。
これから家族みんなで頑張ろうねからすぐ遭難死はもはや半ばギャグだ。

室井が死ぬオチも観る前から最悪のケースとして想定していたけれど本当に死ぬとは。こんな死に方で。死体も見せず。
踊るレベルの巨大コンテンツの二大主役と言ってもいい片方を殺すというのはかなり重大なことだ。というか踊るでなくても主役でなくても、シリーズ物なら大事件だ。
それをこんな死なせ方をするとは。よくこの映画の上映後に踊る大捜査線の続編などぶち上げられたものだ。
別にどんな死なせ方をしても自由だし、今作みたいにさしたる意味もなく死なせるのも悪くはないのだけど、それは作品が死ぬほど面白くないと許されたものではない。アベンジャーズエンドゲームが許されているのはMCUファンにとってエンドゲームが傑作だからであって、単にコンテンツのファンだからなんでも許容しているわけではない。(自分はエンドゲームはつまらないと思っているけど)

室井を今後登場させないようにするシリーズ展開の都合なのでは?と邪推したくなるが、それならわざわざ死なせる必要もない。それこそ引退したのだから。
きっと製作陣は勇退の花道としてこの作品を用意したのだろうと思うし、これがクールな去り方だと思っているのだろうと思う。そうでなければおかしい。

ド酷評の噂だけ聞いていたので、ついにシン・仮面ライダークラスのおもんなが来るかと思って期待していたのだけど、せいぜいシビル・ウォー アメリカ最後の日くらいだった。
いや、ジョーカーフォリアドゥの方が近いか……?そうなると評価上がっちゃうけど、ジョーカーフォリアドゥの方が圧倒的によく出来てはいたからなあ……。
なんにせよ最低限楽しめはしたのだけど、まあ、これは、今年ワースト候補かなあ……。