シビル・ウォー アメリカ最後の日を観た。10月11日、TOHOシネマズ立川立飛にて、IMAX字幕。

オススメ度★★☆☆☆

個人的には微妙で、退屈した。話が薄い。アメリカの内戦である意味を感じない。アメリカ人の分断を描いた映画にはなっていないと思う。
戦争のドンパチが好きな人はたまらないと思う。音も迫力があり、画面も没入感がある(ように感じた)ので、IMAXで見ることを強く勧めたい。自分も戦争シーン自体は楽しめた。
頻繁に挿入される挿入歌も曲調とシーンとのミスマッチをあえて狙っているように聞こえて面白い。
ジャンル的には、ポストアポカリプス、ロードムービー、戦争モノのミックスなので、それらにピンとくる人はどうぞ。
個人的には今年見た中だとフュリオサと同じくらいの面白さだったかな。
たくさん映画やってる中でどれか勧めるとしたらこれは選ばないかなという感じ。

作品全体として「戦争でこんなに悲惨な殺し合いの世界になりました」という描き方をしているのだけど、ポストアポカリプスで悲惨な世界と言われてもそれは映画ではよくある話。独自の味付けが欲しい。内戦や分断を味付けとして使うならそこを掘り下げて欲しい。
でも描かれるのは単調な残虐さだけ。同じ国の人々が意見や思想、地域、人種の対立で分断されているのではなく、単に銃を持った頭おかしい個人と話が通じないだけ。
そういう意味で一番期待感があった「どの種類のアメリカ人だ?」のシーンも、緊張感はたしかにあって凄いけど期待はずれ。予告編では一見人々の分断を表す象徴のようなシーンになっていたけど実際は……。

これ以上不満を書くのはネタバレになることを避けられないので以下ネタバレ。

というわけで、「どの種類のアメリカ人だ?」のシーン、実際は単なる頭のおかしい一個人(あるいは集団なのかもしれないが)が適当なことを言ってるシーンでしかなかった。
ジェシー・プレモンスの赤メガネがどういう立場・信条なのか、人を大量に処分している理由は何か、何も明かされることなく、したがってその問いかけにさしたる意味もなく、単なる世間話みたいなものでしかない。敵対陣営と見なされたら殺される!という状況でもなく、結局殺されたのは香港人の二人だけだ(両方香港かはわからないけど)。アメリカ人はアメリカのどこ出身だと答えようが結果的には追及されず後回しにされている。つまりアメリカ人か否かで対応が変わっているのであって、どの種類かは全然問題になっていない。
どの種類のアメリカ人かが発想として出てくる時点で分断を象徴したシーンだと主張することもできるけれども、個人的にはそうは思わない。ここでの殺戮者たちはいかなる立場も代弁してはいないからだ。
確かに緊張感のあるシーンではあったけれど、それは銃を持った狂人が怖いというだけであって、それ以上でも以下でもない。

結局この映画では、アメリカ人が分かり合えなくなっているシーンではなくポストアポカリプスの狂人と話が通じないだけというシチュしか記憶にない。
あとはコミュニケーションを抜きにした戦争としての殺し合い。
記者仲間は和気あいあいとしていてなんの分断もない。
そもそも対立軸が大統領とそれ以外の二勢力であり、大統領側が弱すぎてほとんど描写もされない。
なんで内戦が起こったのかの説明もない。そこが一番大事だと思うのだけど。アメリカを戦場にする映画を作るために内戦という設定にしただけという風に見えてしまう。

本来この映画に期待していたのは内戦に至る過程や内戦初期の混乱を描くことだったのだけど、実際にお出しされたのは内戦末期のポストアポカリプスだから期待外れになってしまった。
いや、それはそれで満足のいくものを出してくれたら良かったのだけど、上述したように単調な残虐さしか感じられず、退屈してしまった。

記者たちのドラマも薄く、魅力的なキャラはサミーくらいで、主役のリーすら大したことをしゃべらない。ジェシーは加入した時からずっと大事なところでやらかすと確信していたら案の定何度もやらかす。ポストアポカリプスにおいてジェシーのようなキャラは結構ストレスがたまる。
ロードムービーで人間的に成長したり絆が深まるかと思ったら、リーが途中から(サミーが死んでから?)戦場耐性ゼロになって、ジェシーに度胸がついたくらいで、その他さしたる変化も思い当たらない。

好きだったのは小さな遊園地みたいなところで屋敷のスナイパーに狙われるシーン。姿の見えない相手と素性が一切分からないままにらみ合っているというのが戦場の混乱といった感じで良かった。同士討ちの可能性もあったんだろうか。
あと、もちろん「どの種類のアメリカ人だ?」も良かった。繰り返すように、銃を持った狂人が怖いというだけのシーンなのだけど。

ラストが大統領の死体と一緒にニッコリ記念撮影で終わるのは別に構わないのだけど、大統領や内戦についてストーリー上の掘り下げが全然されていないので、多面的な見方ができない。
いくらなんでも自分たちが殺した死体と記念撮影は不謹慎だけど、戦争はここまで人を狂わすんだねえ、くらいのありきたりな感想しか出てこなかった。