1月、年明けて、帰省の帰りの道中でなんとなくアニメを見たら、めちゃくちゃハマってしまった。ぼっち・ざ・ろっく!。
漫画もまずは電子書籍で全巻買った。
グッズも自分にしては珍しくアクスタとかを買ったりした。

どれくらいハマっているかというと、ちょっと憂鬱になるくらいハマった。ちょっとというかだいぶ憂鬱になった。フィクションにハマるとそれに反比例して現実がイヤになってきてしまうのが自分の悪癖だ。子供の頃から、映画館を出たあとはなんだか少し虚しい気持ちになったものだ。
これまでにハマったコンテンツで言うと、プリキュアに昔かなりハマっていた。人生で一番と言ってもいいかもしれない。現状、ぼっち・ざ・ろっくはそれに勝るとも劣らない。この調子でいくと人生で一番ハマったコンテンツはぼっち・ざ・ろっくに塗り替えられるかもしれない。
なにしろ既に全話3周している。人によってはたったそんだけと思うかもしれないけれど、自分にとっては1度見た作品を何周もすることはそうそうない。

もともとライブハウスにはそこそこ行く人間で、下北沢のライブハウスにも何度となく足を運んだので、舞台設定はある程度の親しみをもって受け入れられた。(SHELTERや新宿LOFTに行ったことがあるかは覚えてないが、なんか内装に見覚えがあるような気もする)
バンドを組んだことは無いものの、元々興味があって調べたのもあるし、知り合いや弟がバンドを組んでいたので、バンドあるあるネタも知っていた。
弟に至っては高校生バンドで、オリジナル曲を作り、高校生バンドのイベントにも出ていたので、下北沢でないことを除けば結構作品に近い。あと、弟以外女子だった気がする。そんな弟がこのアニメを見たらどう思うかは知らないが、意外と冷めた目で見そうな気もする。
自分はというと楽器はピアノとギターと、弟の付き合いでドラムをやった事があるので、その面でも楽しく見られた。喜多ちゃんは短期間でギター上手くなりすぎだと思う。自分も学校から帰宅する度ギターを練習した時期はあるけれど、結局高校時代は簡単な弾き語りくらいしかできるようにならず、ましてアドリブなんて……。

8話のライブシーンなんかは特に共感をもって見た。
ライブであのくらい露骨にアンサンブルが崩れたバンドを実際に見たことがある。今は解散したが、メジャーデビューもして、そこそこ有名になったバンドだ。一応ここでは名前は出さないでおく。手数の多めな曲で、各自が自分のパートを演奏するのに手一杯で崩れたような印象を受けた。ぼっちがミジンコになるのと似たような理屈だ。
対バンで初めて見たバンドだったので、第一印象がそれということで、なんとも失望と不安と応援が入り交じった複雑な気持ちになったのを覚えている。本来どんな曲なのかむしろ気になって、物販でCDを買ったような記憶がある。CDの山を掘り起こす気が今はないけれど。
そんなわけなので、結束バンドに興味のない客の気持ちもわかるし、初めの印象がパッとしなくてもその後の曲や演奏でたやすく印象が変わるのも、色んなバンドを見てきて知っている。
そういう意味で8話のライブシーンは非常に納得のいく、説得力のあるパフォーマンスが描かれていたと思う。ぼっちの前奏はベタだけどアガるし、アドリブで弾き始めたことも含めて、演奏面できちんとヒーローに見えるようになっていた。

とはいえそういうバンドものとしての面よりは、普通にコメディとして楽しんだところがある。特にぼっち、後藤ひとりが面白かった。
コミュ障の解像度がわりと高いのもあるけれど、どちらかというと過剰適応と妄想癖による奇行が目立つというキャラが面白い。単なる意味不明な奇行だとシュールギャグになり人を選ぶけれど、理解できる根拠のある奇行は共感を生んでシンプルに面白い。
本当に陰キャコミュ障の解像度を上げると、作中2回あったバッドエンドルート妄想(飲酒ひきこもり)みたいな雰囲気になってきて、ガチ陰キャからするとシャレにならなさが出てくる。原作では他にもバッドエンド描写があり、いずれもある種のメディア産ステレオタイプ的な描写ではあるのだけど、実際正鵠を射ているのでつらい。たまにならいいのだけど、頻繁に出てくるとつらいので、今作くらいの塩梅がちょうどいい。

他のキャラクターも魅力的で、原作を読んだあとだとアニメではテスト回が省かれ虹夏の「私が養うからね」がなくなったのはちょっと痛い。2期があればそちらでやってほしいのだけど、テスト回は江ノ島回に統合されたような感じがあるので、無理かも。

今作のラストではアジカンの「転がる岩、君に朝が降る」のカバーが流れたが、それがとても良かった。結束バンドのアルバムも買ったけれど、その中でも一番良かったと思う。オリジナル曲が沢山ある中でカバー曲が一番いいと言うのは気が引けるけれど。
曲自体の良さもあるけれど、歌い方がいい。そもそもアジカンの歌い方自体もあまり飾り気がないのもあり、ぼっちの演技をしたぎこちないボーカルも曲との親和性が高い。ぼっちが歌っているというところも含め、作品の一部としてのメッセージ性がある歌に仕上がっていると思う。(結束バンドは実際の作中時点ではオリ曲は3〜4曲しかなかったはずなので、カバーというのも受け入れやすい)
何より、アジカンにこんないい曲があるとは知らなかった。いや、アジカンのシングル曲は初期だけそこそこ聴いていたのだけど(アフターダークあたりまで)、当時その中であまりピンと来た曲はなかった。歌いやすかったし無難なので、カラオケでリライトは十八番にしていたけれど。(あと、その期間内でも今聴くと君の街までとかは自分好みなのだけど、聴いたことがなかった。)この曲を聴いていれば、当時もっとアジカンを掘り下げたかもしれない。
なんにしてもこのアニメは、改めてアジカンの曲を聴くいいきっかけになったと思う。

以前から折に触れて言っているが、自分はTVアニメのたぐいが苦手で、それは昔、遊戯王やプリキュアにハマっていた時から変わっていない。この2つも結構きつかったのだけど、愛と忍耐で乗り切って視聴していた。
元々は人並みに中学生くらいでTVアニメを卒業した身だ(劇場版のドラえもんとかクレヨンしんちゃんは見ていた)。最近の子どもはもしかすると卒業しないのかもしれないけれど。自分も子供っぽいからと卒業したわけではなく、単にコンテンツとして苦手になったというだけではある。
何がきつかったのかというと、2点。女性声優のアニメ声と、TVアニメ特有のテンポだ。前者のアニメ声については随分前に完全に克服し、今では大好きになった。
TVアニメの微妙にかったるいスローなテンポは今でもしんどい、むしろ今の方が(忍耐力が減退したという点で)しんどいところがある。TVドラマとかもそうなのかもしれないが、実写では常に視覚的な情報量が多いところ、アニメではただの静止画だったりすることがある。その微妙な停滞感が見ていて引っかかり、もどかしい。最近だと映画ではあるけれど、かがみの孤城でそれを感じた(映画なら劇場に縛りつけられているので我慢できるけれど)。アニメは大量の絵を描く都合上、絶えず動くということができない。TVアニメではなおさらそうなりがちなんだろう。
とはいえぼっち・ざ・ろっくを見ていた時、そういうかったるさは全く感じなかった。ぼざろがよく出来ていたというのもあるかもしれないけれど、なにしろTVアニメを見るのが10年近くぶりということもあり、最近のTVアニメは全く知らない。
意外と最近の作品は見ていて飽きさせないような工夫がされているのかもしれない。映像作品だけでなく音楽や漫画やどんなエンタメも言われている気がするが、最近は出来るだけ早く客を惹き付けるために様々な工夫がされていると聞く。音楽だとイントロを短くしたりだとか。最近の客が飽きやすいというか、エンタメの競合相手が多いのだと思う。退屈な隙間を空けるとすぐよそに行ってしまう。
アニメにおいて昔よりそういう工夫がされているのであれば、飽きっぽい自分としてはありがたい。
そんなわけで、ぼざろを観たことで苦手だったアニメのテンポ感についての印象がちょっと変わった。最近のアニメも見てみようという気になった。

長くなったのでこのくらいにしておく。
なんにしろ、当面の間はお世話になりそうだ。