4月以降いろいろ映画を観たのだけど、感想を書く暇がなく5月も半ばまで来てしまった。
一応観た作品は全て備忘録がてら感想を書いておきたいと思うので、かなり手短にはなるけれど、感想を書いていこうと思う。
Twitterで書いた内容の転載もあり。
以下作品のネタバレを含むので、注意。

5月8日鑑賞。
さんざん実写化失敗映画ではないかと言われ自分もその気配がプンプンするなと思いながら鑑賞。
この映画を初めに知ったのはあのシン・仮面ライダーの上映前予告であり、ドラゴンボール的アクションや星座のCGのいかにも感、真剣佑の微妙な英語といった期待できなそうな予告に失笑したのを覚えている。この時既に、聖闘士星矢を観てみてシン・仮面ライダーと比べるのもいいかもなと思っていた。同じ東映だし。この時の自分はまさかシン仮面ライダーがあんな出来だとは思っていなかったわけだけどそれは別の話。

実際観た率直な気持ちとしては、実写化失敗では決してない。最低限アクション映画としては楽しめた。けれど、聖闘士星矢自体を知らないせいか、かなり合わなかった。
とにかくめちゃくちゃ話に乗れなかったんだけどこれ原作からそうなんだろうか?全体的にプロセスや積み重ねという概念が吹っ飛んでる気がする。通常ならもうワンクッション置くところを置かずに説明やキャラの心情変化などをやるので、急に気が変わったとか謎に強くなったという印象が強い。まあ修行とかはきっちりやっているのだけど……。

例えばごく序盤で捕虜になる人だけれども、いかにも強そうな雰囲気だけ出して瞬殺され捕虜になりムカデを見せられて自白する。そもそもこの人はただの人間のようで、人工聖闘士2人に勝てる訳もなく、なぜ殿を買って出たのか全く意味がわからない。説明が必要だと思う。
グラードは終盤心変わりしてシエナを助けようとするのだけれど、ここまでに強い意志でシエナを追い詰め捕らえたはずが、いざ殺すときにシエナが苦しんでいるとなると急に決心が揺らぎ始め、死ぬ目前になって装置を止めようとする。ここに至るもっと前の段階でシエナやアルマンとの対話などで心揺らぐ描写がないので、唐突に心が揺らぎだしたようにしか見えない。

その他も全体的に、登場人物が全員バカだよね……という感覚がぬぐえない。いや、彼らなりに真剣なのはわかるけれど、話の都合でバカにされてる感が強い。
どうもこのあたりは古き良き少年漫画的な説明のなさも感じる。キャラクター間での認識共有や読者への状況説明に乏しく、力業で、こうなってるんだからこうなんだよと押し切る感じ。なのでセリフもなんかそれっぽい台詞を雰囲気で言ってるだけのようにも感じる。つまりは上滑り。セリフに関してはシン仮面ライダーにも似た上滑り感があり、漫画アニメの文脈でセリフを作るとこうなってしまうのかもしれない。

アクション映画としては及第点というか、肉弾戦に限って言えばマーベルとも肩を並べられる出来だと思う。特に序盤の地下闘技場や、マイロック対人工聖闘士たちのシーンは見応えがある。
組手がダンスっぽいところもあるが、序盤にカシオスから踊るなと連呼されるので、星矢の戦い方はダンスっぽいんだなと受け入れやすい。ただし特に修行で連発される拳法っぽいポーズはさすがにダサい。
反面CGモリモリのドラゴンボール系バトルに関してはどうしても安っぽさがぬぐえない。小宇宙のエフェクトも何だか力強さがなくふんわりしているし(オーラ感を出すとこうなってしまうのだろうか)、飛び方も不自然なところがあった。ぶつかり合う瞬間については力強さがあってよかったとは思う。
つまりはドラゴンボール系バトル自体があんまり実写では見栄えしないということなんだろうと思う。下手にオーラを出すとなおのこと安っぽくなる。マーベルやDCでもしばしば安っぽくなってしまっているくらいには難しい。

見た目の話。
シエナ役の人がなんかちょっと老けて見えるのもつらかった。
いや役者さんは若いんだけどそれでもまだ役に合わないというか、もっと非人間的な見た目が要る役だと思うんですよ多分。メイクかCGかでどうにかならんかな。
あとマリンの仮面姿はこう……悪く言えば滑稽に見えて、集中力をなくす要因の一つだったのだけど、仮面でないといけなかったのか、仮面のデザインもっと何とかならんかったのか。原作でもあんな仮面被ってるみたいだからそこは変えられなかったのか。
その他聖衣のビジュアルなど引っかかりになりそうなところはあったけれど、意外とその辺は大丈夫だった。星矢の兜が急に変形して実写キャシャーンみたいなマスクになる所は笑った。

なんつーか全体的に実写キャシャーンっぽかった気がする……あのマスクで思い出した面が大きいけど……。どの辺が実写キャシャーンっぽかったかというとマスク以外明確に出せなのだけど……なんか全体的な印象として明るくて話がバカなキャシャーンみたいなイメージを持った(それまるっきり別物では?)。
エフェクトの効いた超人バトル、暗め洋館や荒れ地ロケーション、繰り返しの回想やうなされ、主人公がイケメン日本人、あたり……?戦争とスチームパンクない時点でだいぶ違うけど……。

上述のとおり、見る前は予告で新田真剣佑の英語がすごく悪い意味で気になってたんだけど、見てみると特に気にならなかった。というか、他に気になるところが多くて相対的にどうでもよかった。
でも意外と新田真剣佑の英語は悪くなかったと思う。

結論、繰り返すけれど、実写化失敗映画とは感じなかった。きちんと作られている。めっちゃ面白いかと言われると絶対そんなことはないんだけどめっちゃつまらないかと言われると最低限の体裁は整ってるしアクションは肉弾戦が見応えあるしつまらなくはない。
ただどうしても洋画のパチモンという印象が拭えない……。洋画のパチモン感とは言うけど俳優もしっかりした人たちなので、このなんとも言えない感じ、どこから来ているのか?パチモン感というよりB級感と言った方がいいか?であれば舞台の選定とか若干ふんわりしたVFX(十分ではあるのだけどどうしてもドラゴンボール系は安っぽくなりがち)から感じる低予算感から来ているのかもしれない。この手の超人アクションに対する目が肥えているということなんだろう。比較するのはひどすぎるが、直前にガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3を観ていたのもあり、さすがにマーベルと比べると低予算感がぬぐえない(当たり前)。

聖闘士星矢を観に行ったのはそもそもシン仮面ライダーの時に予告で流れて比べたくなったのを思い出したからなんだけど、シンカメと比べたら聖闘士星矢の方が断然面白かった……意外にも。
シンカメの上映前に聖闘士星矢の予告を見た時はそりゃあもう失笑したもので。雰囲気だけで言えばシンカメの方が硬派で背伸びせずに作っている印象があり、かたや金だけかけて結果安っぽく見えてしまうドラゴンボール風バトル…。
しかし聖闘士星矢の方はいざ見てみると予告編にない部分が結構よく、手堅く作られていたので、その点はいい意味で裏切られた感がある。逆にシンカメは安っぽすぎて脚本もすごい上滑りでもう話にならなかった。鑑賞前の印象が入れ替わってしまったかのようになってしまった。

まあ、聖闘士星矢には、予告で死ぬほどつまらなそうでも案外そうでもないといういい経験をさせてもらった。映画自体はあんまり合わなかったけれど。
せっかくこれだけ気合いを入れて序章を立ち上げたのだし、続編はあるならあってほしいのだけど、多分望み薄だろうなと思う。自分の観た回では直前の予約は自分含め2席しか埋まっていなかった。その後人が入って最終的には5席くらいになっていたけど、まあその程度だ。日と時間帯にもよるかもしれないけれど、人気とは口が裂けても言い難い。
それがちょっと惜しいなと思わせてくれるくらいの作品だった。