ジョーカー:フォリ・ア・ドゥを観た。10月12日、立川シネマシティにて、字幕版、極上音響上映。
知らなかったのだけどこの映画IMAX画角らしいので、これから観る人はIMAXで観た方がいいかもしれない。自分は普通の画角で観ました。

オススメ度★★★☆☆

面白かったは面白かったのだけど、人を選ぶと思う。
ジョーカー1を観たことがない人にはむしろ観るなと言いたいし、観たことがある人にも手放しにオススメはできないものの、しかしジョーカー1を観て好きだったならここまで観るべきだろうという気もする。
(追記:反面、1を嫌いだったとしても今作も合わないとは限らないので、興味があればどうぞ。)

ジョーカー1は絶対に観た上で今作を観た方がいい。そもそもジョーカー1の話を大前提にした話なので、単独作として観るのは厳しい。

自分の印象を端的に言うと、「ジョーカー1を好きなあなたは、アーサーとジョーカーどっちが好きなの?」とずっと観客に問うてくる映画だなと思った。
その問いかけに意味があるのかという気はするけれど、とにかくやりたいことはそれなんだろうと解釈した。

登場人物については、相方となるレディーガガ演じるリーが魅力的なキャラじゃなくて困ってしまったところはある。なんだこいつと思いながら見ていた。
人によるとは思うけれど、個人的にはこのキャラがこの映画の最も大きな欠点だと思っている。

軽いネタバレだけど人によっては必要な情報だと思うので書いておくと、この映画はかなりのミュージカル映画で、とにかく歌いまくってその中で現実と虚構も混ざりあって話が進んでいく。
(追記:語弊があったというか、自分の理解が浅いのだと思うのだけれど、この映画はミュージカルじゃないと言う人も多いので、そこは追記しておきたい。ただ何にしても、歌うシーンはかなり多い)
心の準備ができてなかったのか鑑賞後に戸惑っている観客が劇場におり(こんなミュージカルって知ってた?いや……なんて会話をカップルがしていた)、知らずに見て戸惑いばかりで鑑賞体験が終わるのもアレだと思うので、一応書いておく。
自分はうっすら前情報で知っていたし、別に知らずに見てもミュージカルだったくらいなら鑑賞姿勢を修正可能なので、特に問題はなかった。
ただ、どの歌も意味がよくわからなかったなとは思う。色々なニュアンスの込められた複雑な歌詞を全部汲み取るのは自分には無理。結果、歌のシーンの多くがあんまり飲み込めず、なおかつその度にストーリーが止まるので、全体としてテンポが悪く感じたというのはある。

以下は重めのネタバレ含む。

ジョーカー1で作り出したアーサーのジョーカー像を今作で否定したかったんだろうと思う。貧困層で病を抱えて人間関係にも恵まれない男がある種の復讐としてジョーカーになった、というようなストーリーを。
アーサーを殺した男が自らの口を引き裂いて笑い新ジョーカーになるという結末だけれど、その男のパーソナリティは描かれない。いきなり現れていきなり刺してくるだけ。
ジョーカーはいないとアーサーが言っても、アーサーの手を離れてより純粋化、概念化したジョーカーが現れるという話なんだろう、多分。
登場人物のうちジョーカーの信奉者(リーや新ジョーカー含む)が惹かれていたのはジョーカーであってアーサーではないということで、観客のあなたはどっち側?という問いかけを上述のとおり感じる。

自分が好きなのは「アーサーのジョーカー」というキャラクターだったので、今作のストーリーには(刺されて死ぬという結末に)非常に落胆した。だから面白くなかったというわけではなく、そこそこ面白かったのだけど、かなりの蛇足と感じる。
前作だけでまとまっていたし、前作のラストと今作のつながりを感じない。
しかし、前作を見て楽しんだ人には今作を観てその蛇足感で微妙な気持ちになって欲しいという意地の悪い気持ちがある。

(追記:上記の文でちょっと自分の思いに対して言葉が足りてなかったと思うので追記すると、前作でもそうなんだけど、自分はアーサーを多少なりとも応援する気持ちがあって、アーサーがそのままのアーサーでもジョーカーの仮面を被って生きるでもどれでも応援したいという感じだった。要するに前作今作で自分が観たいのはアーサーの物語だったし、前作ではアーサーはジョーカーになることを選んで終わったんだなと思ったし、そういう意味で自分はアーサーとジョーカーどちらかと言われるとアーサーが好きだった。アーサーが今作でジョーカーを止めて将来死刑になるのだとしてもそれはアーサーの選択なのだから自分は肯定して鑑賞していた。
ただ、不慮の事故みたいな形でアーサーが殺されたことでアーサーの物語が唐突に終わったのはとても残念で落胆した。アーサーを殺した犯人がそうなるにしろそうならないにしろ、今作におけるジョーカーという現象自体には愛着はないので、自分が好きだったのは「アーサーのジョーカー」だった、という意味で、上のように書いた。
蛇足と感じた理由については、前作ラストとのつながりやそもそも前作の続編を作る計画は当初なかったという経緯も含め無理のある後付けにしか見えないし、前作で終わっとけばアーサーは死ななかったのに!という気持ちもあるし、前作と比べて今作はかなりスケールが小さくエンタメ性に欠けるし一作目を否定する内容なので、二部作として合わせた時に面白さが落ちるなあという色々な気持ちでそう書いた。ただ、一作目を否定するという試みは現実世界の反響を抜きにしても意味があるものだと思うし、少なくともアーサーがジョーカーを手放すのを二作目にやる意義はあったと思う。なので、後から付け加えられたエンタメ感の少ない蛇足ではあるのだけど、意味のある蛇足だと思うし、その蛇足の意味を受け取って冷や水をぶっかけられたような微妙な気持ちになってほしい、という意味で上記のような文章を書いた。と思う。)

法廷劇とラブロマンスとミュージカルって感じだったのだけど、アーサーがジョーカーに揺り戻されるパートがラブロマンスとミュージカルで、このあたりがあんまり好きではなかった。リーが魅力的に思えなかったため。
リーががっつり犯罪者としての一線を超える展開だったら良かったのだけど、そうでもなく。
なんかアーサーとは一方的にフワフワした距離感で何やっても特にお咎めなしで好き勝手やって、中身のあるキャラに見えない。舞台装置みたい。

(追記:上記の追記文を書いてて思ったのだけど、リーが魅力的に思えなかった理由の最も大きな部分は、アーサーを尊重しているように見えなかったし実際していないところかもしれない。アーサーに対してリーはずっと優位な立ち位置でフワフワ惑わす役割をしており、それに対してアーサーをある種応援する立場で観ていた自分は反感を抱いたのかも。
でも心のどこかでリーはアーサーをある意味支える存在になってくれるかもしれないと期待していたのも事実ではある。まあ結果そんなことはなかったのだけど。
結局アーサーの味方でもなく、実際は行動力があるだけの平凡なジョーカー信奉者で、勝手にアーサーに失望して自殺未遂したりはするものの、振り切ったことは全然せず、リー個人のパーソナリティも全然描かれない、というところで、魅力を感じる隙がなかったなというのがリーというキャラに対する感想。)

ハービー・デントがしれっとトゥーフェイスの顔になっているのはちょっと無理矢理感があって面白かった。