時折映画とか観ているし感想を長々書きかけているものもあるんだけど、いっこうに書き上がらないので、とりあえず最近見た映画ドラマについて、簡単に書ける分だけ書いておく。あまり重厚でなく軽いタイプの作品ばかり。ネタバレなし。既に感想書いた作品も含むし今後改めて書きたい(書きかけ)のも含む。ではいってみよう。

・ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密
面白かった。観客の視点がだんだん変わっていくのがよい。
ダニエル・クレイグの探偵がウザいのは多分わざとそうしてるんだろうと思う。メタ的に再構築した探偵キャラ概念というか、端的に言うと、「探偵キャラって冷静に考えるとこんな風に見えない?」というのを誇張した感じ。ジャンルオマージュかな。
クリス・エヴァンスは何しててももうスティーブ・ロジャースを連想してしまってちょっとつらみがある。
あとはまあ、一家自体が現代アメリカの風刺としてデザインされてるのが良かったですね。
事件自体はだいぶこじんまりしていて不足感あるけど、他の良さでカバーしていてそこまで目立たない。

・ムーンナイト(2話まで)
1話は面白かったけど2話は微妙。
1話は暗くてミステリアスだったのが、2話で突然コミカルな作風になってやっぱMCUか〜といった感じ。
あと今のところ話が薄くて引き伸ばされてる感が否めないのだけど、これは洋ドラだからしかたないか。
オスカー・アイザックの演技が魅力の大半を占めていて、独演劇的な作品。
2話のスティーヴンが不評らしいけど自分はむしろこのドラマで好きなのがスティーヴンしかいない(あと博物館のおばちゃんと警備員と、金色のパントマイマーも好きだけど多分もう出てこない)。1話で恐怖に巻き込まれてる時のスティーヴンは輝いてたよ。
MCUドラマの中では1話のつかみはバッチリだったのだけど、ここからいつものごとくグダグダになっていきそうな気配がかすかにある。
今後ロンドンを舞台にブラックナイトやブレイドとの絡みが予想されるので、そこに至るまでにどんなキャラとして着地するのかは楽しみ。

・モービウス
面白かった。不評なの?ウソだろ?と思ったけど、まあ予告のフェイクが多かったのが主な理由かなと思う。
確かにそこは残念なんだけど、そこで評価が必要以上に下がってる感が否めず、アメコミ映画界にユニバース優先的な見方が定着しているということなんだろうと思う。あと加点方式で観てもらえるMCUと違ってSSUは減点方式で観られる。
映画としては00年代的な作りで簡単な作風なんだけど、MCU的なものに飽き飽きしていた身としては、こういうのでいいんだよこういうので、という気持ちがある。SSUの魅力だと思う。ただこれが嫌な層も多いのであろう。
シンプルな作りの中でわかりやすくてかっこいいエフェクト表現と魅力的なクソデカ感情ヴィランをお出ししてくれるので、光るところがあれば大幅加点する自分としては満足な出来だった。
ただ、ヴェノムよりさらにバトルが暗くてごちゃごちゃしていて、せっかくかっこいいのによく見えないところがあった。ドルビーシネマ向きか。

・ザ・バットマン
ドルビーシネマで見た。面白かった。バートン版に次いで好きかも。
狂気のバットマンというよりは疲れて病んでるバットマンという感じで、歴代一まともだと思う。ストーリーも若くなければ成立しないもので、庇護欲みたいなのがちょっと湧いてきちゃったわね。
長い上映時間でも飽きさせないように展開が詰め込まれてて、退屈せず楽しめた。同じく時間の長いノーラン版は退屈しちゃったので、いい意味で期待を裏切られた。
ただ今回のキャットウーマンがあんまり好きじゃないんだよな。こういう役割のキャラはよくあるけど、いつもなんか愛着が持てない。
あとなぜかなんとなく、相棒劇場版を思い出した。相棒劇場版を観たことはなくて、「何をしたんですかああーっ!」と右京さんが叫ぶ予告編のシーンだけは覚えてる。杉下バットマン。

・ゴーストバスターズ アフターライフ
面白かった。子供の頃に見てたら間違いなくフィービーに恋してた。
しかし「1・2の正当続編」ではなかった。そう言う人ばかりだったのでそのつもりで復習して見に行ったら、違った。2、なかったことになってるよねこれ?
2がなかったことになっているっぽいのは普通に映画を見ていて2の要素にあまりにも触れなさすぎると感じた程度のことなのだけど、他の人の感想を見るとどうも車も違うらしい。あの改造車、2でバージョンアップして名前も変わってたのがアフターライフでは元に戻っているとのこと。2があった世界だとすれば、ダウングレードしたのか、そもそも別の車だったのか。
なので鑑賞後はそんなことがずっと気になってしまった。それこそ2は1の正統続編だったので、なかったことにするというのはなかなか思い切ったリブートな気がする。ターミネーター方式のリブートか?
あと、ほとんどのシーンであんまりゴーストバスターズっぽさはなかった。まずニューヨークじゃないし。気の抜けた大人のギャグも少なく、家庭環境や子供である点が前に出ているので若干シリアスめ。
一方で1のファンが喜ぶような過去作要素は欠かさず詰め込んでいる。マシュマロマンなんて、今作に出てくる理由が全然ないので疑問符がつくけれど、でも出てくれた方がうれしい。
80年代のあの質感をそのまま再現してみせたのもこだわりが感じられていいんだけど、シリーズ初見だと令和にもなって何だこのCGはとなりかねないのが難しい。
面白いのだけどなんとなく腑に落ちきらない映画だった。とりあえず、これからこの映画のために予習しようと考えている人には、2は観なくていいよと伝えたい。

・大怪獣のあとしまつ
面白くなかったけど面白い映画ではあった。
もうネタバレ感想は書いたので詳しくはそっちを見てほしいんだけど、書き損ねたところも多い(ストーリーの本筋とか)のでまた2個目の感想を書きかけている。
つまりはそのくらい結構語れるところが多く、臭いはキツイけどよく噛めば旨味があるような、そんな映画。大体の人は噛まずに捨てる。そんな映画を何故全国シネコンで展開したのか(あるいはその逆)は知らない。
絶望的に寒いギャグはわざとなのかどうか未だによくわからない。1回目の感想ではわざと説を仮に採用してみたけど。
作品理解を深めるために2回目見に行こうかと思ったけど、時間がないのでやめた。
三木聡監督の作品は転々くらいしか見たことがないので作家性はよく知らないけれど、あとしまつはかなり作家性を発揮して思い通りに作れたんじゃないかと思う。作り手好みのしかけが多いので。
転々は邦画の中でトップクラスに良いと思うので、興味のある人はぜひ。

・スパイダーマン ノーウェイホーム
面白かった。
ネタバレ要素に関してはもう観る前から予想がついていたのでそんなに驚かなかった。これから見る人は当然のごとくネタバレに触れてから観るんだろうと思うけど、いちおうここでは書かないようにする。
まあやっぱりサム・ライミ版を子供の頃に見て映画サントラまで買った身としては、やっぱ彼らが出てるだけで満足できるよね。
ただオタクへのサービス映画という色があまりに強くて、これでええんか?コンテクスト共有してなくてもわかるんか?とは思った。
でもプリキュアとか仮面ライダーとかだって世代が毎年変わりながらもあれで続いてるんだし、まあいいのか。前提知識わからなくてもその場である程度雰囲気理解できて面白く感じることは往々にしてあるし。
冷静に観ると話としてはだいぶ変なのだけど、まあお祭り映画ならある程度は許容して楽しもうという感じ。お祭り映画でもエンドゲームなんかもっとメチャクチャだったしな(エンドゲームはつまらなかったけど)。
あとはやっぱり、ウィレム・デフォーがめちゃくちゃに良いのと、マックス(ジェイミー・フォックス)のイメチェンがめちゃくちゃにコレジャナイなのが印象的。

・ホークアイ
微妙。全てのキャラに全く好感を持てないまま終わった。書いてて気付いたけどMCUは全体的にキャラ造形がイマイチだ。
エンドゲームの出来事が話の基本にあるのが痛い。自分はアレで失笑してしまったので、今作でその要素が出るたびに話のしょうもなさが増してしまう。
あとケイトがめちゃくちゃイライラさせてくるキャラなのもきつかった。未熟な相棒は嫌いではないけど、ケイトの場合コミカルに言い訳を連ねるのが挑発的ですらある。
つまらないわけではないのかもしれないけれど、キャラに馴染めないと終始冷めた気持ちでドタバタを眺めることになる。良いトコもあんまり見つけられなかった。マーベルスタジオなので一定以上の品質があるというのは良いところ。

・ヴェノム レットゼアビーカーネイジ
大当たり。SSUが90年代にまで足を突っ込んだ。
裁量大きめのスタッフの中に絶対ティム・バートン好きがいる。オイスター・ボーイの憂鬱な死を愛読書にしているようなやつが紛れ込んでいる。
これは別にクレタスの過去描写とか収容施設のゴシック様式とかだけから言っているのではなくて(当然それらが大きいけど)、作品全体から異形への愛情が見て取れる。アウトサイダーなりの幸せや悲哀というものが込められているなと思うし、それはヴェノムのカミングアウトシーンやラストバトルの舞台から感じ取れる。
前作よりさらに明るくコミカルで、でも決してただふざけているわけではない。自分なりに明るく前向きに人間関係の中で生きようとする結果がこれなのだ。ダークヒーローやヴィランに求めるかっこよさとは違うかもしれないけれど、どのキャラクターも愛おしい。その結末としてのラストバトルの舞台で、クソデカ感情関係性オタクはニヤニヤと気持ち悪い笑顔にならざるを得ない。
残酷描写が全然ないのはたしかに残念ではあるけれど、観ていて特に気にならなかったので、加点要素が一つないというくらい。
観た人は全員思うと思うけど、ダンが実にいい味を出している。前作に引き続きあまりにもいいやつだし、古き良き80〜90年代テイストの出番も光る。脇役も脇役ではあるけれど、続編があるならまた必ず出てほしい。
不満点は上映時間の短さ。この美味しいキャラクターたちをもっと見たかった。
あと当時真っ先に見た人たちが「ポスクレが本編」と公言しまくって本編内容を軽んじていたのは本当にキツかった。これもユニバース展開(特にMCU)にしか興味のなくなったオタクの悪いところだ。そりゃ自分だってユニバース展開は楽しみだけどさ。

・DUNE
つまんね!というのが素直な感想。ちなみにグランドシネマサンシャイン池袋のIMAXレーザーGTで観た。
続編ありきの作りだとは知らなかったし、それにしたって旅の仲間くらいには一作で話進めてほしかった。せいぜい裂け谷に着いたくらいじゃないかこれ?
アカデミー賞を取ったハンス・ジマーの重低音も、鳴りすぎで早々に飽きた。普通であれば音楽は何でもないシーンを盛り上げてくれるのだけど、今作においては何でもないシーンで鳴ると「うっせ!今そういう雰囲気じゃないだろ!」という気分にさせられる。
とはいえ初めからなんとなく単調な映画だと予想していたので(超古典SFと言われるとそんなイメージ)、最低限雰囲気良ければいいかとハードルを下げていたのだけど、音楽に気を散らされてきつかったな。アカデミー賞とは気が合わない。

・エターナルズ
ハリウッドが大金かけて作ったそこそこ面白い幸福の科学映画。これもIMAXレーザーGTで観た。
もちろん本当に幸福の科学の映画ではないのだけど、世界観やテイストがあの辺に近い。なお幸福の科学映画は永遠の法と太陽の法を当時劇場で鑑賞済。他は観てない。
古代UFOで高度知的生命体がやってきて、更に高次元の神々の指令のもと、人類の進化を見守ってきた……というような世界観は80年代あたりに勃興したオカルト要素モリモリ新興宗教とのが非常に高い。
聞いた話ではこれは元ネタというか源流が同じだから(ニューエイジ思想?)ということらしい。間違ってたらごめん。ただ何にしても創作は時代的なものなので、原作に当時流行りの要素が組み込まれても不思議ではない。エターナルズもしくはディヴィアンツについてはそこはかとなくレプティリアンを思い起こさせる設定だけれども、レプティリアンの別名にチタウリというのがある。MCUのエイリアン種族の一つだ。
一番残念なのは、コスチュームがMCUで一番ダサい。というか、服の神々しいデザインが人間のみすぼらしさを誇張してしまっている。神々しさに憧れてむしろみすぼらしさを晒してしまうのもまた宗教によくある愛すべき一面であり、宗教映画っぽさを増幅させている。コスプレと揶揄すれば伝わるとは思うけど、似合ってないのをコスプレと揶揄するのはコスプレに失礼。
ユニバースを前提としたハイコンテクストなキャラの映画なので、MCUの根幹的世界観の説明や今後の展開への布石、各キャラの説明といった、多すぎるノルマをこなしながら添え物に薄いストーリーを引き伸ばした感じ。これは教義を説明するタイプの宗教映画の作りだと思う。言うなればこれはMCU教の教義映画なのかもしれない。
ポリコレと揶揄されている点についてはむしろ好印象。キャストや設定の多様性が話の根幹にそこまで関わってこないのはむしろ現代のリアリティだろう。それが強引なオチにもほのかに色を加えている。
戦闘シーンはマッカリはじめかなり見応えがあるのと、セルシの着信音がJuiceだったのは良かった。ネタバレできればもうちょっと話の良いところも語れるのだけど、やっぱり薄めなことは否めない。
※薄めとだけいうとちょっと言葉が足りなかったので付け加えると、各キャラにストーリーがあるので話は多いけど尺が足りないせいで全て薄い話になっている。そのわりに設定説明はノルマ的にしっかり尺を取ってやるので、さらに全体として薄まっている。(まあそれを抜きにしても一部過去シーンがよく言えばゆったり、悪く言えば冗長なのだけど)

・えんとつ町のプペル
ハロウィン再上映で観た。全然面白くなかったといえば嘘になる。
脚本は細かいひっかかりがありつつもそつなく要所を押さえていて邦画アニメとしては及第点だし(逆にそのそつのなさがちょっと気になる)、CGは日本の3Dアニメ映画としては最高峰だと思う。なによりもCGキャラが不気味になっていないのが良い。日本の3Dアニメ映画はなぜことごとく不気味なCGキャラを量産するんだろう。根本的な美意識のレベルでそれらとは別のステージに立っている。えんとつ町のビジュアルも素敵で、絵本は絵柄が嫌いで予習すらしてないけど、絵本からしてそうなんだろう。
観る前はルビッチがあまりにブサイクすぎて、これが西野亮廣の代弁しながら活躍するの嫌だなあとか思っていたのだけど、思ったよりも理想化されてない愚かな子供なので、見てみるとまあ受け入れられた。でもブサイクすぎると思う。
基本はプペルとルビッチのバディムービーで、若干キャラが饒舌なのが気になるけれど、ストーリーもいくらかひねりがあって普通に楽しめた。途中までは……。
途中から話の雲行きが怪しくなり、「まさかそんなオチにはしないよな……」と不安になっていたら、結局そんなオチになってしまった。それじゃ話が台無しじゃねえか!と思うのだけど、でもそれは好みの問題と言われるとぐうの音も出ない。
ただまあやっぱりかなり(日本の3Dアニメ映画にしては)良い出来ではあり、このクオリティを実現できた背景に西野亮廣の影響力と戦略があったことは認めざるを得ない(西野亮廣の創作性がどの程度発揮されたかは知らないが、その面でも一応そこそこ意見を入れているらしい)。このレベルのものを出されると、西野亮廣エンタメ研究所の会員なら承認欲求が満たされて無敵モードに入ってしまうだろうと思う。自分が会員なら何を言われても「でもウチらはプペル作ったしなあ」で論破?できてしまう。プペルが駄作だと思うのも自由だけれど、会員がそういった自信と確信を持つに十分なクオリティは間違いなくある。
別に自分は西野亮廣のサロンを頭から否定する気はないのだけど、もし否定したい人がいるなら、最も警戒すべきはこのような高品質で宣伝過多な成果物だ。幸福の科学が本にしろ映画にしろ繰り返しやろうとして(失敗して)いることを完全にやってのけているのだ。
とりあえずまとめると、細かいところでひっかかりつつ割と面白かったけれど、オチだけは許せないという感想になる。ネタバレしていかにオチが許せないか語りたいのだけど、書きかけのネタバレ感想はもう半年近くお蔵入り状態だ。公開する日は来るのか。