ドクターストレンジMoMも見たのだけど、そちらの感想はまた後日として、とりあえずサクッとムーンナイト。今回はネタバレ全開で行く。

多分全員思ったと思うんだけど、ハロウ先生はなんだったの?というところが一番大きな疑問点として残った。

自分は割と情報を見落としつつかなり自分で補完しながら見るタイプなので、精神病院(タウエレトの出てきた方の空間)はマークとスティーブンの精神世界が冥界の中とか現世と冥界の境目で具現化したものと思っている。その中で記憶を巡ったのが5話として、じゃあハロウ先生の方は何かというのが気になっていた。そちらではマークとスティーブンは現実のように同じ体を共有している。

この答えは残念ながら6話でも提示されなかったように思う。ラストで血の足跡が残ったのもよくわからないままだ(これはさすがにちゃんと見ていればわかるようになっているはずだと思うのだけど、見返す元気はない)。自分はこのハロウ先生とのやり取りが今作で一番好きだったので、ここが投げっぱなしになっているのはかなり悲しいところだ。現実のハロウが死んだ以上、あの空間の再登場もないだろう。
おそらくはこちらもマークの精神世界で、マークのセルフ治療もしくはハロウ先生はマークの精神に干渉する何か(それは外の第三者からでもいいし別人格とかでもいい)だろうと思っていたのだけど、ここまで観た印象としては、「ムーンナイトもマークとスティーブの妄想に過ぎないのでは?」と視聴者を混乱させるためのミスリード以上の意味を見出せなかった。

あと、マークとスティーブンが砂から戻れたのもよくわからない。復活した(門が開いた)こと自体は単にオシリスの許可が出たんだろうけれども、あの砂はなんだったんだろう。一度マークも砂になったので、スーパーパワー云々(マークとスティーブンの関係性変化)は砂からの復活に関係ないと思うのだけど。メタファー的な描写だとしてもちょっと飲み込み辛かった。
あと蘇生が一応可能というのはけっこうMCU的に大きい気がする(けれど多分今後活かされることはない)。記憶があやふやだけど明らかに死んだ人間が蘇るのは多分これまでなかったのでは。

そうした明らかによく分からないところを除けば、さすがに最終回ではあるし、展開も(ドラマにしては)スピーディー気味、というか巻き気味だったのでわりと楽しんで観られた。マークとスティーブンのバディ関係が成立して息の合ったコンビネーションを見せるようになったのも楽しいところだったし、コンスが割と体を張るタイプであながち最低野郎でないところを改めて見せつつ、最後にはやはり全然良いやつではないというキャラクターの塩梅も良かった。ムーンナイトが月を背に飛び立つシーンもアガる感じだった(その後はなんかロケットみたいになってて変だったけど)。

あと6話で気になった点を箇条書き。
・ハロウがアバターになっても変身しない(期待していたのに)
・他の神々のアバターが弱すぎる(まあここは話数的に雑に処理されるとは思っていた)
・レイラがワンダーウーマンっぽすぎる(そもそもあんまり要らなかった気がするけれど)
・なぜかアメミットとコンスが巨大化して肉弾戦をする(別にアバターの勝敗と関係していないため、なんの戦いなのか全くわからないし、なぜ巨大化したのかもわからない。絵面は楽しかったけれど……)
・第三の人格(ジェイク)に結局マークもスティーブンも頑なに触れようとしないし(明らかにおかしいので何か精神的な理由があるとは思うけれど)、船の天秤の時になぜか完全に無視されていたことも不可解なままだ。

総じて、他のMCUドラマに比べれば楽しかったけれども、それはオスカー・アイザックとイーサン・ホークの演技力と、精神系描写の虚実を乱れさせる演出によるもので、描かれるストーリー自体は真新しいところがなく、かつ一部は投げっぱなしで終わったという印象。特にオスカー・アイザックはもはや独演劇と言っていいレベルで貢献していた。あとやはりドラマシリーズにつきものの制作費の限界を感じた。

今作はMCUでも他作品との関連が極端に薄いという点で特異な作品だった。そのため、久々にMCUのユニバース描写ノルマが少ない単独作としてどれくらいやれるか期待したのだけど、MCU以前にやはり洋ドラとしての特性が足を引っ張っているように思う。

ワンダヴィジョン以降のドラマは全てそうだけれど、シンプルにクオリティが低い(制作費は映画並だし、洋ドラとして見れば高いのかもしれないが)。押しなべて話が間延びしているし、CGも一見してチープ(映画と比べて)。これなら映画でやってくれた方がはるかによいのだけど、ディズニープラスの販促なのか、単体映画でやるには人気が取れないという判断なのか。

そしてMCUはユニバース展開を最優先にしているため、描写の多くを作品内で説明する必要がなく、次に期待を持たせるための(作品内では大して意味のない)要素というのがただでさえ多いのだけど、ドラマという媒体特性と合わさってそれが加速している。映画にもまして、各話がヒキとユニバース優先で作られてシリーズ内で完結しない、投げっぱなしになる話が多い。

その点、今作は独立性が高く話の軸がシンプルだったこともあり、ある程度一作で完結できていてそれは良いのだけど、それにしてもやはり洋ドラらしいライブ感重視の仕上がりになったような気がする。
独立した作品だからこそ、やっぱり映画で観たかったというのが正直なところだ。