すずめの戸締まりを観てきました。ネタバレ感想を書こうと思います。
とは言っても特にあまり語ることは無いので手短に。
基本的には深く考えずにさわやかな感じで楽しめました。
あと他の新海作品は君の名はしか観てません。

以下ネタバレ。

・ロードムービー、総集編みたいだった
猫が悪そうとかいう程度で前情報ほぼなしで見に行ったので、ジャンル的にそっちとは思いませんでした。まあどんな映画を想像してたのかと言われると特に何も想像できてなかったんですが。
猫のダイジンを追いかける中で、現地の人々に出会いながら、その地の後ろ戸を閉じていくというのは、ロードムービーだなあと。風景が綺麗なのもあって、また廃墟や災害を取り扱っているのも含め、それぞれの土地が影の主役といった感じ。
個人的には、大分と愛媛をフェリーで移動した経験があるので、愛媛のフェリー乗り場が出てきた時は懐かしさでテンションが上がりました。
あと、それぞれの場所で区切りがはっきりしているのがテレビアニメのようでもあり、かつ各パート微妙に物足りないので、知らないアニメの総集編を観ているようでした。まとめられる前の12話くらいを見たいですね。

・キャラがかわいい
すずめに関しては、田中将賀キャラデザはやっぱいいねということで。映えますね。
草太が早々にイスになりマスコット化するのがいい。いちいちかわいいし、アクションシーンでは椅子がやたらアクロバティックに動くのでちょっと面白い。
すずめと草太は旅の中で恋心を育んでいくことになりますが、片方が長身男ではなくイスになっていることで、恋愛の生々しさみたいなものをオミットできていたと思います。オミットするべきかどうかは別として、自分はそのおかげでさわやかに楽しめました。(元々は女二人旅の予定だったようなので、それを踏まえてもこのくらいの感じで良かったと思います)
ただ、なんでイスになったのかは特に説明がなかったですね。いやダイジンが変えたのはわかるんですが、どんな能力だよという。人間一人実体を消してイスに閉じ込めるってかなりの無茶苦茶やってるので多少の能力説明は欲しかったところ。
ダイジンは狙ってのことなんでしょうけどあんまりかわいくないですね。目がでかすぎる。
あとは芹澤くんがかわいい。あのルックスで昭和ソング好きなのはあざといですね(他の人の感想も見たんですが、これはジブリへの言及なんですかね)。うっかりすずめの叔母さんとくっつきやしないかとヒヤヒヤしました。

・また災害モノか
後ろ戸から出てくるミミズ、それが引き起こす地震を止める、ということで、また災害モノかという感じ。
東日本大震災が起きてからというもの日本人のトラウマに響く題材であるというのはわかるし忘れてはいけない出来事だとは思うんですが、新海作品に限らず、作品内で言及されるのはちょっと食傷気味。フィクションとの食い合わせがあまり良くない。
今では、災害を人為的に制御するというあたりに、災害に対するある種の克服願望みたいなものを読み取ってしまい、わかったわかった!という気持ちになってしまいます。東日本大震災後の災害克服モノだと(何そのジャンル)、シン・ゴジラがその走りだったと思うんですが、シン・ゴジラもゴジラと対決する後半はつまらなかったし、なんだか克服には都合の良さを感じて乗りにくいです。今はまだ。
とはいえ自然災害を祈りや儀式で抑えようとするのは古来から行われてきたことでもあり、今作でのアプローチはどちらかというと伝統的なものでもあるんですが、今やるとどうしても東日本大震災の文脈を引き継いでしまいます。
結局ラストで東日本大震災がモロに出てきますし、今作はむしろ進んで向き合おうとしてるんだと思いますが、現実に起こった東日本大震災を出すなら、地震を制御する題材は相性が悪い。制御できなかったという直近の現実が、フィクションの説得力を損ねてしまったかなと思います。ラストの草太の呪文もちょっと説明的すぎてフィクションの域をはみ出てしまっていました。あとラストの呪文は祈りをまくし立てているのが宗教映画感も感じさせてノイズでした。
とまあこうは言いましたが、地震を制御する、という題材自体は何とか飲み込んで楽しめていたので、ラストでの東日本大震災要素や草太の呪文が非常に蛇足というか、余計な文脈を付け足して冷めてしまったなという感じです。

・ストーリー設定が説明不足
総集編っぽさはこのあたりにもあるんですが、設定の説明がなんか足りないですよね。
後ろ戸がなぜ廃墟にあるのかとか、草太はなぜイスにされたのかとか(ダイジンの能力説明がほしい。普通人間はイスにはならないし元々の要石は別の形)、なぜイスの足が一本欠けてるのか(元々のイスはどうなったのか)とか、なぜ叔母さんが突然闇堕ちしたのか(サダイジンの影響みたいな演出だったけどあれは何)とか、なぜ旧家に後ろ戸があってなぜそこからすずめは常世に入れたのかとか、要石は元々なんなのか(ダイジン・サダイジンはなんなのか)とか。
ダイジン・サダイジンについては草太のように要石の元になった存在があってそれが猫化してるのかなと思いますが。ダイジンは要石にされた時まだ子供だったのかもですね。
まあこれらの疑問点は自分が見逃し・読み取れてないだけかもしれませんし、見ていて気になりはしたものの勢いで目をつぶりましたが……。
新海誠作品はだいたい「もっと観せてほしいな、これじゃ足りないな」と思わせられる気がします。二作しか観てないけど。

・だいたい楽しめた
気になるところとか気が散るところはけっこうあったものの、特にモヤモヤも残らず、繰り返しますが、さわやかな視聴感で楽しめました。君の名はでは終わり方でちょっとモヤモヤが残ったので、個人的にはすずめの戸締まりの方がラクに見れましたね。
あと、個人的にはボーイミーツガールよりガールミーツボーイのほうが性に合うかも。
君の名はと比べて面白かったかと言われると、盛り上がりには欠けたかなと思いますが、ロードムービーだし、やっぱりストレスがかからずラクなのがいい。キャラのかわいさや風景の美しさに集中できるので、これはこれでいいかなと。
新海誠×田中将賀の作品をまた観たいですね。

(2023/1/5追記)
・2回目見た
後ろ戸がなぜ廃墟にあるのかはラストで草太から一言説明がありましたね。人の気持ちの重さがミミズを抑えているということで、忘れられた=人の気持ちが軽くなったところに後ろ戸ができるということ。
なので旧家に後ろ戸があった意味は、テーマ的には、震災の記憶が薄れつつあるということで良さそうですね(幼少期のすずめが迷い込んだ時に後ろ戸があった理由はわからないけど)。
後ろ戸を閉じる時にその地の人々の記憶に触れるのも、そういうことだということで。継承的な意味もあるかも。
2回目の新しい発見はそれくらいだったかな。