今年はいつにも増して映画をたくさん見ているようなそうでもないような気がするので、一年が過ぎるのを待たずに上半期公開映画でランキングを作ってみることにした。
前回の2022年ランキングと同様、一応順位付けはしているけれどランキングに入ってるものは基本的にどれも楽しめた。今回だと1位はちょっと別格なのだけど、どれもあまりに甲乙つけがたくて同順位が多発してしまった。
予告編でわかる程度の内容は含むけれど、ネタバレなしで説明するので映画に興味が出たら観てみてね。
まずはどの映画をいつ見たか。
2月
アントマン&ワスプ クアントマニア
BTS: Yet To Come in Cinemas
3月
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
シン・仮面ライダー
シャザム!神々の怒り
5月
マッシブ・タレント
ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り
なのに、千輝くんが甘すぎる。
ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME:3
名探偵コナン 黒鉄の魚影
聖闘士星矢 The Beginning
6月
ザ・フラッシュ
怪物
リバー、流れないでよ
スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
5月がやばい。映画館行きすぎ。
待望の作品と言うよりその場のノリで観に行った作品が多く、何故か足が軽かった。現実逃避のために映画館に行くことを目的化していたような気がする。
基本的にはアメコミ映画とエブエブ、シンカメ、マリオあたりは待望作だったのだけど、その他はちょっと興味あるし今昼過ぎだから映画観に行っちゃおくらいのノリで観に行った気がする。あと誘われたやつ。
以下ランキング。同順位は鑑賞順。
1位 ザ・フラッシュ
年間ベスト級の快作。個人的にはMCUあたり以降のアメコミ実写映画でもトップクラスの出来。
アメコミ映画におけるマルチバース・タイムトラベルものの決定版であり、今後マルチバースネタにおいてアメコミ映画でこれを超えるものが出るかというとかなりキツイというか無理だと思う。MCUがマルチバースサーガをチンタラやってるうちに、フラッシュが一作で瞬足で追い抜いた挙句、フィニッシュテープまで切ってしまった感がある。
マルチバース・タイムトラベルのギミック要素やお祭り要素をふんだんに組み込み、各キャラ(特にバットマン)の魅力を存分に描ききっているにも関わらず、一方でフラッシュの疑似オリジン映画として一本筋の通ったストーリーに仕上がっている。どれだけ客演が多くてもこれはフラッシュの映画なんだと自信を持って言えるのは、フラッシュ自身がタイムトラベル能力を内包していることと、アイデアに満ちた脚本と演出の妙によるところが大きいだろう。
なおかつこの映画一作で十分楽しめるように細部まで気を配られている。ストーリーの中で自然に説明を織り込む親切設計。マルチバースの説明もわかりやすい(風にしている)。初見に親切に、マニア的なハイコンテクスト要素はオマケ的に。
アクションシーンも満足度が高い。各キャラクターの個性がしっかり出ていて、フラッシュの最初のアクションシーンはそれ自体がキャラクター説明も兼ねていて見事だし、二人のバットマンはどちらも「これが観たかったんだよ!」というツボをついたシーンになっている。暗くて見えないのが嫌いなわけではないんだけれど、今作は明るいシーンのアクションが多いのも良い。
音楽もいい感じに気分を盛り上げてくれる良い仕事をしていて、今でも時々YouTubeで聴いているくらいだ。
欲しかったものほとんど全てを高い完成度で見せてくれる映画で、大変良かった。唯一の不満は、スーパーガールの活躍をあと2倍……せめて1.5倍くらい観たかったことだろうか。魅力的だっただけに。サッシャ・カジェのスーパーガール、今後の作品で何かしら続投してほしい。
1位 スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
こちらも年間ベスト級、どうしてもザ・フラッシュと甲乙つけ難くて同列1位。
とにかく映像体験がヤバすぎる。前作から既にアートの領域に達していたのに(こう言うと他の映画がアートじゃないみたいになるので好きな言い方ではないけど)、今作ではそれがさらにクオリティも表現の幅もスケールアップしていて、戦慄・震撼という言葉がふさわしい。一種の映像のドラッグだ。情報量の洪水で、毎秒コマ送りで観たいと思わせられるけれど、それでいて観客にどこを見せるか誘導がはっきりしているので、ストーリーを追う邪魔にならない。それでもパンクする人はいるかもしれないけれど。
ストーリーも時間をかけてキャラクターを粒立たせていて飽きない。内容としては前後編の前編なので種まきがメインでそのまま途中で終わってしまうのだけど、キャラクターの心の動きや演出で引っ張ってくれる。次作が楽しみだ。
これまでのマルチバース作品では異なるバースの共演自体を一大イベントとしていたのに対し、今作では前作以上にワラワラと有象無象のスパイダーマンが出てきて面白い。メインになるキャラは限られているけれど、それでもこれだけ多くの異なる世界観が一つの画面内に共存するシーンが観られるのは、マルチバースものでみんなが見たかった光景のひとつだと思う。フラッシュとこれでもうマルチバースはやり尽くしましたという感がある。あとはこのスパイダーバースの路線で気軽に共演してくれる作品が続くとうれしいな。
どうしても次作の展開次第で評価が変わってしまうような映画ではあるのだけど、それを差っ引いても超ド級の映像体験と魅力的なキャラクター描写だけで、個人的には年間ベスト3は固いかなと思う。劇場で大画面で見るべき。
3位 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
マルチバースを異なる自分の有り得たかもしれない可能性としてとらえたヒューマンドラマ。感動して泣いたけど話の内容はよくわかっていない。難解なので注意。
どういう方向性で難解なのかと言うと、どの誰がいつどこで何の話をしてるのかが意図的にぼやかされていて判然としないのだ。まあ話自体は一連で繋がっているので大まかなストーリーライン自体は追えるのだけど、細かいところがなんだかよく分からず自分の中で未解決のうちに進んでいくので、なんとなくモヤモヤしながら見ることになる。
よくわかっていなくても泣けるというのはエモーショナルなシーンを作れているということなので、それだけで十分ではあるのだけれど。
上手くいかない人生とか認めてもらえず居場所がない自分とか家庭内のディスコミュニケーションとか、普遍的で一般的なところに話のベースが置かれているので、今の自分がパッとしないなとか、自分の属性が他人に受け入れられなくて辛いなとか、そういうことを感じている人にはけっこう刺さると思う。
マルチバースの設定の面白さとか、キレのいいアクション、クレヨンしんちゃん的なコメディ部分など、難解なストーリー以外にも見所は多い。
よくわからないけれど、笑いや涙など感情にはしっかり訴えかけてくる珍作。何にしても今回のランキングで唯一落涙させられてしまったのでこの順位。マルチバースもの三連発になってしまったけれど、なんでマルチバースネタで良作が同時期に三本も公開されるんだろう……。
4位 シャザム!神々の怒り
アメコミ映画続き。別にアメコミ映画が好きで特別贔屓しているわけではないのだけど、面白かったからしかたない。これを見た時は3月だったので、こりゃあ早くも今年のアメコミ映画トップかもしれんなと思ったくらいには面白かったのだけど、今年は豊作のようだ。
とはいえ今作もアメコミヒーロー映画に求めるものが十分に詰まっている。明るいコメディチックな雰囲気でしっかり笑えるシーンもありつつ、容赦のないヴィランでシリアスな緊迫感も演出し、アクションシーンやCGも見栄えのするものを出してくれて、アメコミヒーローの人助けノルマもきっちりこなし、ヒーロー性とは何かというテーマをシャザム!の設定を活かした作劇でしっかり掘り下げてくれる。キャラクター描写も粒立っていて、オマケのクロスオーバーもちゃんとある。至れり尽くせりだ。
ストーリーも意外と先の見えない二転三転があり、飽きない。エンタメの密度が高いと思う。
シャザム!のいいところは主人公がまだ子供というところで、ジュブナイル的な要素を含んでいる。なおかつ里子制度で大勢の兄妹と共に扶養されているという設定が独特の90年代的な暖かみを生み出している。ヒーローは概ね孤独なものだけれど、シャザムは大勢のティーンにゼロ距離で揉まれながら暮らしている。この雰囲気がめちゃくちゃに好き。そしてこの家族観を前作でストーリーに組み込んでいたけれど、今作でも焼き直しにならないようしっかり織り込まれている。
アメコミ映画の2なので若干の過去作予習は要るけれど、なくてもちゃんとほとんど楽しめる作りになっている。見る人を選ばない一品だと思う。
4位 名探偵コナン 黒鉄の魚影
ランキングをつけるにあたってどれも甲乙つけ難くて悩んだのだけど、「胸を震わせた」という点ではコナンが一つ抜けているかなと思う。
これはある程度コナンを知っているからなのだけど、こんなことを映画でやっていいの!?というストーリーになっていて、かなり動揺させられた。漫画原作のアニメや映画というのはどうしても原作の外伝的な扱いになるのだけど、外伝としてはけっこうラインを超えた展開を盛り込んできている。特にラストはオイオイオイやりやがったという言葉で脳内が満ちて、こればかりは観てもらう他ない。
他にもアクションシーンはかなりテンションが高くてその力の入れっぷりに思わず笑ってしまったし、いつも通りの冒頭解説も今作はちょっと違った演出になっていて、久々に「漫画アニメの映画版を見た」という高揚感を覚えるグレードアップした仕上がり。映画版はこの高揚感がなくては。
とにかく、灰原ファンは必見。
4位 怪物
重たいヒューマンドラマなのだけど、ネタバレ抜きでどんな映画か説明するのが難しい。
基本的には、謎が大量に振りまかれる映画で、話が進むにつれどんどん物事の見方が変わっていく、そんな構成になっている。と言うと、説明の難しさが分かると思う。
特にトリックのあるミステリーとかそういうのではないのだけど、謎に振り回されるのが好きであれば、おすすめ。ただ、それはこの映画の本筋ではない。ネタバレ抜きの説明だと本筋ではないところを強調せざるを得ないのが難しい。
そしてメインとなるヒューマンドラマ要素も、賞を取っただけある緻密に入り組んだ良い脚本なので、安心して観てほしい。
基本的に暗い話なのと、けっこう難解なのに注意。難解というのはわからないと楽しめないということではなくて、ぼんやり見るだけでも多分大丈夫なのだけど、しっかり細かく掘り下げていくといくら考えても終わりがない感じ。味わい深い作品。
関係性オタクにはおすすめかもしれない作品その1。
あと、自分はメンタルが弱いので、観ていてちょっとストレスがかかるのがキツかった。緊迫感とは別に、ちくちくするところがあるので、心がナヨッとした人は注意が必要かも。
個人的には何回も見たくはないかも……。
7位 リバー、流れないでよ
旅館を舞台に2分間のループをひたすら繰り返すループものコメディ映画。2分間という、何かをやりきるには時間が足りない設定が絶妙で、観ていて間伸びもせず退屈しないどころか忙しなくて楽しい。2分間中はずっとワンカットで回しているのも特徴。
ノリは完全に舞台演劇で、役者陣の演技も舞台の文脈だし、スケールの小さいフィールド内でワンカットでキャラがわちゃわちゃドタバタしながらコメディを展開していく様子もとても舞台的。
それでいて2分ループのアイデアはとても舞台ではできない映画的なアイデアで、舞台と映画のハイブリッド的な良さがある。
ただ、コメディ舞台的な演技が鼻につくという人もいるかもしれないので、そこは予めそのつもりで観るといいと思う。あとはスケールの小ささで物足りなさが残るかも。
自分は、とにかく撮るのが大変そうだなあとかそういうところに意識がいきつつ、短時間ループならではのドタバタや日常からの軽い逸脱行為なんかを見て楽しめた。
8位 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
誰もが知ってるスーパーマリオブラザーズの3DCG映画。マリオが映画になったというだけで感無量。
高品質な明るく楽しいコメディタッチの冒険アニメに仕上がっていて、深く考えるところは一切無し。マリオたちと一緒にアドベンチャーを楽しもうという意気込みで観るのが吉。
ゲーム要素を小ネタ・ファンサービスのツールとして使うだけではなく、スーパーマリオブラザーズのゲーム性をストーリー上で表現して見せるのも粋。
ストーリーはやや平坦なところがあるけれど、笑いどころは沢山あるし、アクションシーンも見せ場が多く、キャラクターも魅力的に描けている。個人的にはピーチ姫がかなり可愛くて当たりだった。洋画でよく見るいわゆる自立した強いヒロインのキャラ造形なのだけど、それがマリオのメンター的立ち位置として作劇上上手くハマっていて、ビジュアルと合わせてチャーミングさがよく出ていた。
他映画のオマージュネタも気が利いた使い方で嬉しい。
9位 マッシブ・タレント
ニコラス・ケイジが本人役を演じるコメディ映画。
この手の映画は自虐的なトーンが強くなりがちな気がするのだけど、今作は作中のニコラス・ケイジのフィクション度が高めで、終始明るく楽しめる。現実のニコラス・ケイジとはけっこう違いがあるのだけど、自分はニコラス・ケイジのプライベートまでよく知らないので、なんとなくそういうもんかと映画を見た後に改めて調べて「全然違うじゃねーか!」となった。
そうなるとニコラス・ケイジである必要がそもそもあるのか?ただの落ち目俳優役ではだめなのか?という疑問が湧いてくるのだけど、やはりニコラス・ケイジのある種ミーム的にキャラクター・アイコンとして確立されている強みが遺憾無く発揮されていて、ニコラス・ケイジがニコラス・ケイジとしてわちゃわちゃしているだけで一定の面白さがあるし、全編を通して(自分では把握しきれなかったけれど)ニコラス・ケイジの過去作ネタが散りばめられていてストーリーに絡んでくるのもファンには面白いところだろう。
ストーリー自体も大筋はそこまでひねっておらず素直にコメディ映画として楽しめる。ただ、笑いの中にも独特の緊迫感があったり、思いの外アクション映画っぽいところもあったりして、ゆるみきった雰囲気のコメディではない。でもかなりバカバカしい。鑑賞後の余韻もこのランキングの中では異質で独特。
大富豪ハビと関係性を深めていくプロセスがかなり味わい深いので、関係性オタクにおすすめかも作品その2。
9位 ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り
明るく瑕疵のない娯楽作。原作由来と思われる設定にややとっつきづらさはあるものの、本当にいい意味で何も考えずに楽しめる丁寧な良作。原作を知っていたらもっと楽しいのかなあ。
端的に言うと明るいロード・オブ・ザ・リングみたいな感じで、コメディタッチな作風なのにファンタジー描写に一切手抜かりがなく、映像美だけでも十分に楽しめる。
ストーリーも重すぎず軽すぎず、親子キャラや落ちこぼれキャラのドラマがきちんと粒立っていて、落とし所もちょうどいい。コメディシーンもしっかり笑える。敵役やクリーチャーの恐ろしさもしっかり感じられる。
とにかく全てを高いレベルでそつなくこなしている印象なのだけど、ノリが軽い作品なので引っかかりなくサクッと見られてしまい、逆にもう少し長い時間観たかったと物足りなさが残る。そのドライな後味も良さなのかもしれない。
個人的にはエドガンとサイモンが好きなキャラ。サイモンの方は、見ている間なんとなくダイの大冒険のポップを漠然と思い出していた。
誰にでもおすすめできる良い映画だけど、ちょっとビックリさせてくる演出が数回あるので注意。
11位 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME:3
MCU作品ではいつぶりになるかというくらい久々の快作。ドクスト2などとは違う「無難な」快作だ。
MCUらしい豪華絢爛なVFXとアクション描写、スケールの広い宇宙SFの舞台で、ジェームズ・ガンお得意の洋楽選曲をバックに、目を見張るアクションシーンとともに、無難に感動的なストーリーが展開する。
もともとGOTGシリーズはMCUの中でも特に評価が高く(2は個人的にあまり乗れなかったけれども)、その高い期待に今作は見事応えてくれた。いささか小動物の可愛らしさに頼りすぎている気はするけれど。
GOTG2やホリデースペシャルではジットリしたウェットな疑似家族感があってしんどかったのだけど、一応最終作となる今作では、それぞれのキャラがいい距離感で爽やかな仕上がりになっている。特にガモーラの取り扱いが上手い塩梅。ヴィランのハイエボリューショナリーもクセのある良いキャラ。
ただ、ドラマ的にはややとっ散らかった印象を受け、ロケットを中心にしつつもガーディアンズそれぞれでドラマがあまり粒立たずにバラけて散漫になった印象。アダム・ウォーロック関連は重要シーンがいくつかカットされたのかと思うほど物足りず常に唐突に見える。一方でなんかストーリー上よく意図の分からないシーンや展開もあって、少しバランスが悪く感じた。
シリーズ展開ユニバース展開などを経たハイコンテクストさも目についてしまい、特に改めて過去作を見返してもいない昔見たきりの身としては、細かいところであれは何で誰がどうだったっけというところに意識がいった。十分な予習(過去作の復習、特にGOTG2)が要る映画だと思う。予習が十分であればもう少し楽しめたかも。
12位 アントマン&ワスプ クアントマニア
なんの真新しさもひねりもない、いつも通りのMCU映画。でもフェーズ4以降はそういう無難な作品がMCUには足りておらず、逆に待望されていた平凡MCU映画ということもできる。つまりは、無難に体裁の整った大作娯楽映画ということだ。
作風も比較的明るめで、感情を強く揺さぶられることもあまりないため、ポップコーンやらピザやらを食べながらダラっとした姿勢で見るのが合う。
量子世界というので独特の世界観を期待したら、スターウォーズのパチモンみたいな何かばかりを見せられる。実質的には平凡な宇宙SF映画と思っていい。
そうなると、この数ヶ月後に公開されたGOTG3と同じ土俵に立ってるようにも見え、そこで戦うなら明らかに完敗ではある。公開順が逆だったら、もう少し厳しい評価になっていたと思う。まあ、GOTG3と比べ予習の必要性が薄いことは良い点かもしれない。とはいえやはり過去作の出来事くらいは知っておかないと話の土台がわからず置いていかれかねないのはやはりいつものMCU。
なんかけなしてる雰囲気になったけれど、とはいえさすがにMCU映画、基本的なクオリティは高く、ぼんやり見ているだけで十分に楽しめる。ヴィランの存在感や親心の描き方など、オッと思うところもあるし、キャラクターにもポジティブな印象を持って見終われる。
無難に誰にでも見せられる映画といった感じで、軽い気持ちで見るのに適していると思う。
13位 BTS: Yet To Come in Cinemas
他の映画と同列に並べるのはどうなんだろうと思ったけれど、まあドキュメンタリーみたいなもんかと思って入れてみた。
BTS自体は楽曲をいくらか知ってるくらいでメンバーの顔の区別も名前の記憶も曖昧だったのだけど、それでも充分楽しめた。顔の区別もわりかしつくようになった。さすがに世界的なアイドルというだけあり、無知初心者から見ても、楽曲もパフォーマンスもハイレベルだ。一方でやはりアイドルだからか、なんか女性向けのかっこ良さというか、キメキメPVをライブでやってるみたいな演出のシーンもあり、そこはちょっと乗れなかったかな。舞台セットの中でかっこいいポーズ決めたりするやつ。現地だとどう見えたんだろうあれ。
観たい部分をあまり写してくれなかったり、謎のアニメーションがあったり、ライブの演出や、映画化に際しての(多分)再構成にちょっと疑問があったりと、細かい不満はあるにはあったのだけど、まあそれはどのライブ映画にもあることだと思う(アニメーション以外は)。
あとファン的には、このライブは兵役関連の出来事の最中な時系列らしく、そのあたりのストーリー性を熟知していればなおのこと涙を誘うライブだったのだと思う。
できれば舞台裏を見せて欲しかったな〜。
14位 なのに、千輝くんが甘すぎる。
冴えない女子に、都合のいいイケメンが向こうからやってきてガンガンアプローチをかけてきてくれる甘々ラブコメ映画。
エロは一切ないのだけど、女性の性欲を強く感じさせられる映画だった。男性向け作品を見る女性の気持ちはこんな感じなのだろうか。個人的には独特な体験で悪くない。
ああ〜〜!!都合が良すぎる〜〜!!見てて照れるけど気持ちいい〜!!という感じ。顔を両手で多いつつ指の隙間からバッチリ凝視していたくなる、そんな映画。
ただ、オタク蔑視的な描写が少しあるので、オタクくんが観るのは注意が必要(観ないと思うけど)。とはいえ、オタクなんてこんなもんだという気もしないではない。
この順位にしたのは個人的な好み(ラブコメが得意ではない)が大きいので、合う人にとってはめちゃくちゃハマるかもしれない。でも自分も楽しかったよ。めちゃめちゃ戸惑いながらの鑑賞ではあったけれど。
15位 聖闘士星矢 The Beginning
またネットでミーム的にバカにされることになる実写化失敗映画が生まれたのかと思いきや、意外にもちゃんと楽しめるアクション映画。特に肉弾戦の仕上がりがよく、ほとんどスタントなしでこなしたらしい新田真剣佑の動きもいい。
見た人はだいたいマーク・ダカスコスが好きになるような気がする。
ストーリーはけっこう展開が唐突だったりして見過ごせない瑕疵があるような気もするけれど、まあどうしても気になって困るようなものではないし、わりとアクションが乗れるのでいいだろうと思う。原作未読だけれど、ストーリーのこの変な感じはなんとなく原作の問題な気がしなくもない。
どうしても気になるのはドラゴンボール的な超人バトルのすわりの悪さと、衣装の微妙さと、ヒロインがなぜかちょっと老けて見える点。
超人バトルはどうしても実写だと滑稽に見えるなあと思った。特にオーラを発するとなんだかふんわりして見えて居心地が悪い。このあたり、日本の漫画文脈の超人描写が、実写系CGとの食い合わせがかなり悪いんじゃないかと思わざるを得ない。
ヒロインは役柄的にもっと非人間的な美しさが欲しかったところだ。メイクやCGでどうにかできたのでは。
まあ、全体的にB級映画感は拭えないのだけど、普通のアクション映画として観る分には悪くない。
圏外 シン・仮面ライダー
1号2号ライダーとサイクロン号の、デザインだけが良かった。
あとはアクションも映像もストーリーも全てがキツイ。それらが衝撃的すぎて音楽は全く印象に残っていない。演技指導のせいかコミック調のセリフのせいか演技もかなり微妙。怪人デザインも著しくダサかったり逆にピカピカの今風すぎたりして、1号2号の優れたエバーグリーンなデザインと整合性を感じないし、好みでもない。わざとチープにしたと思われる部分もただダサくて面食らうだけで映像表現として面白くない。
まあ、端的に言うと、映画の全てがダサくナンセンスに見えるのだ。そして全体的にエンタメ映像作品としてのグルーヴ感や疾走感が無く、全てが断片的で連続性に欠ける解けたパッチワークのようで、感覚的に乗れない。意味がわからなくても感覚的に楽しめるのが映画のいいところだと思うのだけど今作はそれすらない。
オマージュ(古臭さ)のせいでダサくなっているのかと思い、後日YouTubeで初代ライダーの1話2話を見たけれど、そちらの方は普通に面白い。単に古臭いからダサいとかつまらないとかいう話ではないようだ。
自分はわりと映画を見る目は甘々というか、微妙だったと言う映画でもなんだかんだ感覚的には楽しめてるのだけど(前回ランキングで微妙枠に入れたブラパン2あとしまつシンウルも楽しめはした)、本作は終始戸惑って全然楽しめず人生ワースト級だったので、ランキング圏外という扱いにした。Z級映画というほどではないのだけども。(追記:ただ、劇場鑑賞直後に「自分がデートで彼氏に連れてかれてこの映画見せられたら、別れることを真剣に考えるかもしれん」とまで思ったのは書き留めておく)
惜しいところとしては、要所要所でロケーションを強調した一枚絵としての美しさをメインに据えたカットがあり、単体で見れば綺麗なのだけど、差し込み方が強引で連続性に欠けるので強い違和感を感じてしまい魅力半減。写真集ならこれでも良かった。ただ、こういう一枚絵の美しさを追求するのが作家性のひとつなのかもしれないとは思った。
まあ、一方でこの映画を狂おしいほど好きな人もたくさんいるし、良くも悪くも観て損はしないんじゃないかな……。配信も明日7月21日から始まります。自分ももう一度だけ観るとは思う。