シークレット・インベージョンがこの前の水曜日で最終回だった。せっかく見たので簡単に感想を書く。
端的に言うと面白くはなかった。いや、楽しめたのだけど、楽しめた作品の中ではかなり下の方、という感じ。
これはもう自分が悪いのかもしれないけれど、まず前提として、MCUがユニバースとして進行しているストーリーがそもそも面白くないのである。今作で言えば地球にいるスクラル人をどうするかという部分だ。
それぞれの作品はそれぞれの主人公にドラマが用意されていてそれが軸になっているからカバーできているのだけど、どうもMCUはドラマとなると話の軸がとっ散らかるというか。
例えばアントマン新作はあまりパッとしなかったけれども、スコットの親子愛を強調するシーンはやはりグッと掴まれるところがあった。それは作品のストーリーや演出が明確にそこに力を入れているからだ。
シークレット・インベージョンではニック・フューリーが中心となるはずなのだけれど、このキャラのどこにドラマの焦点を当てているのか最後までわからないまま終わった。
アクションシーンやCGはまあMCUドラマ品質というか頑張りましたね……という感じではあるのだけど、それが面白さにつながっているかと言うと微妙なのが残念。
最終回のバトルなんかは特にアクションもCGも大きな見せ場のひとつだったと思うのだけど、ストーリー上の違和感で全く集中できなかった。
あと、スクラル人がやはりどうしても特殊メイクをした人間にしか見えず、(実際はCGなのかもしれないが)そのアナログな作り物感がどうにも浮いていてキツかった。
以下ネタバレ。
ニックのドラマといえば、なんか夫婦愛みたいなところに話を落ち着けたけれども、まず「なんかこの奥さん急に生えてきたな」という印象を持ってしまったし、この夫婦のシーンで特に心打たれるシーンがなかった。お互いに銃で撃って外し合うシーンはまあかっこよかったのだけど、積み重ねがない(だってこのドラマで急に生えてきたから)のでドラマ性がほとんどない。このシーンで初めてはっきりと「この2人は互いを思い合ってるんだな」というのが確信できるくらいだ。そこ以外で特に印象的なシーンはなく、やはり夫婦愛というところは弱かったと感じる。
この作品のもうひとつのドラマはタロスとニック、ガイアの関係であるけれども、タロスがあっさりと死んで特にそこからなにも発展しないので(そりゃあ心境くらいは変わっただろうがやることは何も変わっていないし止まってもいない)、そこのバディ感や親子関係といったところも希薄に終わってしまった。
結局そうなってくるとスクラル人勢力をどうするかという方のストーリーがメインにならざるを得ないわけで、MCUはこういう勢力対勢力みたいな話になると途端にドラマ性が薄くなってただ争うために争ってるだけみたいになるし、ユニバース展開の大きな流れの中のストーリーなので正直どうなってもどうでもいいところがある。ユニバースとしてダラダラ展開しているストーリー群は作品を跨ぎまくっているせいかテーマ性に乏しいふんわりした出来事群でしかない。今作もその一つという感じになる。
今作の特徴はスクラル人の移民問題であり、現実の移民問題に照らし合わせた作劇も期待できたはずなのだけど、スクラル移民問題はほとんど掘り下げられずに終わった。
これの割を食っているのがグラヴィクで、このドラマはニックがスクラルに協力させていたという事実の提示に終始していて、スクラル人が地球でどんな目にあってきて何を思っていて、ニックに(特にグラヴィクが)どんなことをさせられてきたのかということを全然掘り下げようとしない。
結果としてグラヴィクは途中までミステリアスな指揮官の風でありつつ突然愚かな指導者に堕して、最終的には何もかも口で説明してしまう軽いキャラになり下がってしまっている。
グラヴィクだけではない。このスクラル移民問題について全然尺を取らず描写しないせいで、今作はスクラル人の過去に基づいた話なのにそれをほとんど口だけで説明するということになっている。その結果、世界観もひどく狭く感じる。
ひょっとすると、スクラルの過去を映像として掘り下げる金と時間がなかったのかもしれない。
ストーリー展開に対して、こういう展開だったから萎えた、好みと違って許せない、みたいな文句というのはあまり言わないようにしている(というかあまり感じない)のだけど、今作ではめちゃくちゃひっかかることがあった。
それがガイアのスーパースクラル化だ。
まず、スーパースクラル化が簡単すぎる。特に言及がなかった気がするが、これはスクラル人でなければ適応しないのだろうか。最低限そうでなければ、突然現れたオーバーテクノロジー感が拭えない。いやそれでもヤバイけど。
それに合わせてあの「収穫」による大量ラーニング。作中別格扱いされているキャプテンマーベルの力まで手に入れてしまい、完全にバランスブレイカーと化している。MCUのパワーバランスをひっくり返す大事件だが、今作ではヌルッと流されて終わっている。
まあ、別に流されて終わること自体はいいのだけど、ちょっと起こってることが大事件すぎて、「これこのあとどうすんの!?能力なくなるの!?相打ちで2人とも死ぬの!?こんな大事件をこのドラマクオリティで流していいの!?」となりバトル自体に全然集中できなかった。結局スーパーガイアが生き残り能力も保たれるという、今後のMCUで絶対無視できない(でもたぶん無視する)展開になってしまった。
いいのか悪いのかで言えば、(どうでも)いいのだけど、視聴中にめちゃくちゃ戸惑ってしまった。まあ、戸惑うこと自体は意図通りなのだと思うし……。