落下の解剖学を観た。3月3日、kino cinema立川高島屋S.C.館。字幕。

楽しめたは楽しめたのだけど、楽しみ方が難しくてよくわからなかった。

あと途中から座面が痛くなってきて集中できず。

作品の性質上ネタバレしないようにしてもネタバレしそうなので、星だけ先に。星3.5としたいところだけどまあ四捨五入で★★★★☆。けっこう楽しめました。

以下ネタバレ。

で、結局事件の謎は解かれなかったんですけど、観てる僕らが有罪無罪を決めないといけない系の映画ですかね……?

真実がわからない時は心で決めるの、とマージに言わせたのはそういうことですか……?

俺は……俺は真相が観たかったよ……!

まあなんか、途中から夫婦仲の問題に移っていったあたりで、これは真相がどうとかの映画ではないんだなとはうっすら思ったのだけど……。弁護士のヴァンサンが冒頭あたりで「事実よりも周りからどう見えるかが重要なんだ」みたいなこと言ってたのも裁判の一般論かと思っていたけれど、それ自体がテーマだったのかも。

裁判での事件の謎解きも物的証拠というよりも決めつけや一方的な仮説、エピソードからの推測ばかりのように思えたし、結局そういう、誰の目から見ても明らかな真相などないみたいなことをやりたかったのだろうか。凶器すら出てこないし。

実際の事件でこんなんだったらそりゃ無罪になるのでは……という気もした。

どちらかと言うとストーリーは事件の謎より家族関係の秘密を暴く方向に向かっていて、まあそれはそれで面白かったのだけど、結局事件の真相がなければそっちも決着がつかないというか……ダニエルが無罪を選んだだけというスッキリしなさを抱えて終わらなければならないのか……。今後の親子関係はどうなるのか……。

最初の方は大音量のBGM?これはアリバイ作りのトリックか?この母親怪しすぎる!とか思ったけれど、サンドラ側の言い分ばかり見てるうちになんとなくサンドラに肩入れしたくなってきた。そして裁判が進むうちにサンドラにとって都合の悪い事実が明らかになるにつれ、やっぱりサンドラに全面肩入れもできないぞとなり、いったい誰が犯人なのか、どの意見が真相に近いのかがわからなくなってくる。

その辺の情報量はきっとダニエルも同じような感じで、観客はダニエルの立場に置かれていたのかもしれない。

裁判中、ダニエルの肩越しにサンドラを見るカットが頻発するのは、ダニエルの視点を観客も共有しているという意味もあるのか。

一方で自分はずっとダニエル犯人説をちょっと推していて、犬にアスピリン飲ませて殺しかけた時はホラ来た!という気分だったのだけど、結局明らかにそうではない雰囲気で終わってしまった。

そんな感じ。

ぽかんと見てる分にはけっこう楽しめたのだけど、制作側の捻った部分がピンと来ないまま終わってしまった。要するに断片的な事実や主張の寄せ集めでは何もわからないのをやりたかったんだろうとは思う(サンドラが言ってた気がする)し、それでこの映画はいいのだと思うけれど、人間関係のドラマを断片的にずっと見せられて、その決着が観客から見えないのはなあ。わからないことに何らかのテーマ上の意味がある……のだろうけど……。

役者の演技はどれも良かったなあと思います。個人的にはヴァンサン弁護士が顔も良くてキャラ立ってて好き。検事もいい感じにムカついて良かったですね。

サンドラとダニエルはもちろん良かったのだけど、最後までこの二人の真実がわからないまま終わるので、なんとも言い難い。