(追記:公式のレポートが出ました https://movies.shochiku.co.jp/kagaminokojo/news/230526report/

6回も7回も同じ映画を劇場に見に行ったことはいまだかつてない。多くて2回までだった。3回見たことも一度くらいはあったかもしれないが、自分の意思で進んで見たわけではないと思う。2回ならまだしも、わざわざ劇場まで行って、3回も4回も内容のわかってる同じ映画を見るなら、別の映画を見た方が何かしらの糧になると思っているからだ。
5月26日、丸の内ピカデリーまでかがみの孤城再開城舞台挨拶上映を観に行ってきた。これでかがみの孤城は通算7回目の鑑賞となる。どうしてこうなってるのか自分でもよくわからない。
特典商法か追加映像か……今回は追加映像かなと思う。悪どい売り方やでほんま(原監督も今回自虐的に悪どいと言っていた)。流石に8回目はないのではないか……今回からの特典(フィルム風しおりとクリアポスター)も新規絵ではないし。特典にしろ追加映像にしろ要するに追加の新規要素があることでわざわざ行っていた面が強いので……。初回特典でまさかの後日談(3種ランダム)が展開された衝撃が大きかったということだろう。

運良くか、たまたま仕事が早引けの日だったのでとくに有休を取得する必要もなかったのだけれど、あろうことか丸の内ピカデリーを新宿ピカデリーと勘違いするという大ポカをやらかしており、上映直前まで新宿ピカデリー下の無印カフェで優雅にチーズケーキなど食べて時間を潰していた。
上映15分前が近づき、そろそろ開場の時間かと思い食事を切り上げて、QRコードを表示する準備のためにスマホの画面に予約情報を表示し、入場準備は万全とばかりに悠々と新宿ピカデリーへ歩を進めていたのだけど、なんとなく画面を改まって見直したら、丸の内ピカデリー。気持ちがめちゃめちゃに盛り下がり、もう帰りたくなった。
しかしもう2100円は払っているので気を取り直し、その瞬間からあわてて翻って丸の内ピカデリーへ向かった。最寄りの銀座駅へ到着するのは18時1分の予定だ。上映開始時間は18時。徒歩やエレベーターも含めると到着は早くても18時5分くらいだろう。確か閉場の日上映は予告編なしでの即上映だったので今回もその可能性が高い。つまり冒頭5分以上を見逃すことになる。
思ったより新宿ピカデリーから銀座駅って近いんだな(普通に30分以上遅れると思っていた)と思いつつ、やはり気分は落ち込んでいた。いくら何度も観ているとはいえ、いざ改めてまた観るとなると、逃したくないシーンは存在する。かがみの孤城の場合、個人的に最も良かった部分が冒頭5分くらいに集中しているため、それをまるまる逃すと思うと、一体何のために観に行くのか、ただでさえわからないのがなおさらわからない。
とはいえ結果として、運良く最後の予告編くらいの時に着席が間に合った。今回は予告編を上映していたのだ。おかげで助かった。というだけのしょうもない日記。

映画の内容については今さら語るところもないのだけど(何回かがみの孤城について書いてきたのか……)、やっぱり変なところのある映画だなと思う。7回見てもいくらかの飲み込みづらさというかひっかかりがある。例えば細かいところだと嬉野がケガをするところなんかは、即堕ち2コマ感のあるテンポがギャグっぽくて面白いけれど何回見ても複雑な気持ちになる。話がなんか唐突に見えるところは何回見ても戸惑うし、音楽が変なシーンは何回見ても変だ。
でもなんとなくスルッと観れてしまう。当初感じた一番の美点である総合的な物語の良さみたいなものは何度も何度も繰り返し見ることでもうだいぶ褪せてしまって、半ばベルトコンベア式に右から左へ流してしまうのだけど、それを差し引いても観ていてつまらないなと思うことはない。
まあ、前にも書いたとおりこころがめちゃくちゃ可愛らしいので、それだけで観てられるというところはあるのだけど……。

今回からのスペシャル映像「かがみの孤城の前と後」だけれども、代わりにこれまでのスペシャル映像(初回特典を映す映像)がなくなっていた。「かがみの孤城の前と後」は初回特典の内容も意識されているので、これまでのスペシャル映像と合わせるとやや冗長になるか。今回の映像けっこう長いし。
一応、意識されてるとはいえ、初回特典を観なくてもわかる映像にはなっているけれど、かがみの孤城を今回から見るという人は初回特典を観られないことになるため、円盤特典に含まれることを期待というところだろう。余談だが、一応今回の舞台挨拶もBDに含まれる可能性があると司会が話していた。
映像の内容的には、ここで詳しくネタバレをすることはないのだけど、原監督が書いたらしい宮崎あおいさんのナレーションが非常に多く、正直予想していなかったし内容も幾分抽象的だったので内容を理解するほど聴き入ることが出来なかった。絵的にも初見ではわからないワンポイントが各カットごとにあると原監督が言っていたので、何回も観る前提なのかもしれない。悪どいぜ……。
ナレーションについては「運命なんかない」という原監督の好きな下りをアラビアのロレンスから引用した(ことにあとから気づいた)と原監督が言っていて、そこから怒涛のアラビアのロレンスネタバレ解説が始まった挙句、結局ロレンスは運命に抗えないみたいな話のオチで終わって、そのある種のナンセンスさをかがみの孤城に引用した意味のなさを考えるとこの話なんだったんだ?と思わざるを得なかったのだけど、これまでのティーチインとかを聞いて、原監督はそういうところがあるとよくわかった。
原監督はスペシャル映像について「手抜きと言われないか不安だった」らしいのだけど、個人的には思いのほかボリュームがあったと思う。そりゃ本編と同じくらい手間がかかってるという訳ではないのだけど、ディレクターズカットの蔵出しというわけでもなく、上映後に追加された新規映像を出してくるというのは、普通の映画としてはなかなかないのではないか。もう少し手抜きなのを予想していたのでちょっと驚いた。ちなみに先週描き上がったらしい。
スペシャル映像については原監督は「(自分の発想ではなく、人を呼ぼうという)製作委員会的な発想で作られた」というふうなことを言っていたのだけど、製作側のその熱量はどこから来るのだろうか。
今回からの再上映開始は、一応作中でかがみの孤城が5月に開いた設定に合わせているらしいのだけど、わざわざ特典も複数用意して全国で再上映をするというのは割とただ事ではない(大分すら再上映している)。興行収入は10億くらいと言われていた気がするけれど、そんなにこすり倒すほど儲かる作品なのだろうか……。すずめの戸締まりとかならわかるけれど(そういえばすずめの戸締まりは入れ替わるように5月27日で終わりらしい)。

今回の舞台挨拶の司会は日テレアナウンサーの岩田絵里奈さんということで、何しろ彼女がアナウンサーデビューしたらしい頃には既にテレビを見なくなっていたので全く存じ上げないのだけど、どうも喜多嶋先生の同僚役で出演もしていたらしい。原監督からも声優みたいと褒められていたけれど、短いセリフながらキャラクターのよく出た上手い演技だったと思う。
モノマネが得意ということで原監督に無茶ぶりをされてしんのすけの真似をしていたけれど確かにうまかった。かがみの孤城冒頭でもしんのすけのマネがあることを意識したのかはわからない。

當真あみさんは舞台挨拶が初めてだった時と比べて今は成長している気がすると言っていたけど、確かにこの前と比べるとだいぶこなれていた。なんかちょっと寂しさがある。
こなれていく前の良さがあって、當真さんのある時期がかがみの孤城に込められている、ようなことを原監督は言っていたのだけれど、今の當真さんがこころを演じたらまた違うのだろうか。

最後の方で原監督がポロッと言ったところによると、再上映でドルビーシネマ上映が開始するにあたり、作画の手直しが少し入ったらしい。舞台挨拶上映はドルビーシネマではなかったけれど、同じ映像ソースだと思われる(そんなことを原監督が言っていたと思う)。具体的にどういう手直しなのかはわからないけれど、ちょっと気になる。
個人的にはかがみの孤城のキャラ作画についてはけっこう不満があるシーンも多いのだけど、多分そういう意味での作画には修正は入ってなかったんじゃないかと思われる。高画質上映に合わせての細かな調整といったところではないだろうか。あるいは自分が気付かなかっただけで結構描き直されてたりするのかもしれないけれど。前に観たの2ヶ月前だしあまり覚えていない。

全然関係ないけれど、上映後に恐らく無関係のお爺さん客が学生客数名に「若い子は珍しい」などと話しかけてかがみの孤城グッズを何か配っていて、まあ劇場での出会いというのもあってよいとは思うのだけど、ちょっと独特な距離感だなと思った。
今になってかがみの孤城の舞台挨拶を見に来るような人はだいぶ煮詰まってる人が多いので、必然的に独特な観客が多い。確かに周りを見ると年齢層は高めな印象があった。別にかがみの孤城は年齢層が高めの客に特別リーチするというような映画でもないので、監督ファンや當間ファンが年齢層高めなのか。再上映の舞台挨拶を見に来るのは既にかがみの孤城を繰り返し観ている人が多かろうと思うので(実際今回も既に5回以上見たという人が沢山いた)、好んで繰り返し同じものを観るリピーター的性質を持つ人が年齢層高めに多いのだろうか。

そんな感じか。
さすがに自分が観に行くのはこれで終わり……か……?ドルビーシネマくらいは暇な時にもう1回くらい見てもいい気がしなくもない。
なんというか、他の映画と比べて別に特別ハマったわけでもないのだけど、追加要素目当てに繰り返し行くというのは十分ハマってる気もする。多分BDも買うだろう。繰り返し観たい部分は確かにある(どちらかというと作画的な意味で……っていうかこころが可愛いシーン)。
今後、ここまで何回も劇場に行く(行かされる)映画はあるだろうか……。