金カム実写化でTwitterに不安の声が渦巻いている。アニメ化と比べて邦画実写化への不信感が強いことをひしひしと感じつつ、自分も今の邦画界に金カムを無難に実写化できるとは思えず、やっぱり同じように不安を漏らしてしまった。
そこでふと思い出したのがザ・ファブルで、良い実写化だろうという期待があり劇場に観に行こうと当時思っていたのだけど、すっかり忘れていたので、この機会にアマプラで観てみた。母が家に来ていたので一緒に観た。
というわけでネタバレなし簡単感想。こまめに書きたいとは言ったけど一作ずつになるとなんか違う気もする。

まあそこそこ面白かった。
話はまあこんなものというか、原作の話を過不足なく映画にまとめていたような気がする。原作の話をよく覚えてないけれど。

キャスティングに違和感はなかった。というか、佐藤兄妹さえイメージに合っていればよかったので、そこには文句がなかった。他のキャラに愛着がある人からすれば、ちょっと受け入れがたいかもしれない。若いイケメンになったり削除されていたりするし。

アクションシーンもまあまあ良かった。サクサク殺す手際は実写映画の中ではかっこいい方だし、途中壁をよじ登るシーンも身体能力の高さが表れていて見ごたえがあった。
一方、多数が入り乱れる戦闘になるとどうしても無理のあるシーンが目立ったし、人数に押し負けるようなシーンもあってかなり微妙というか雑さを感じた。ドアかなんかを盾にするシーンは普通にドアに穴空きまくってたし、不殺かどうかよくわからない描写があり、本当に殺してないのかという意味でハラハラした。
あと、冒頭だけファブルの脳内を描いたような動線や文字が描かれていたけれど、ない方が良かったと思う。画面がごちゃごちゃしている割に何を描いているのか曖昧で、アクションの邪魔になっていた。母なんかは線があるからワイヤーで殺しているのかと勘違いしていた。この手のやつで成功している作品もあるけれど、今作は失敗例だと思う。
というか普通に原作と同じ冒頭で良かったと思うのだけど、邦画大作となるとやはりつかみをゴージャスにしたかったのだろうか。

また、邦画の最大の欠点である演技過剰が今作でもかなり出ていた。原作からして抑制的な作風なのだから、実写化でもそこは踏襲してほしかった。漫画より実写の方が漫画っぽい表情やたら多いという謎。
特に柳楽優弥演じる小島がとても漫画チックで良くなかった。ムショ帰りということもあり作中でも浮いているのは当然なのだけど、それにしてもコミカルなキャラで現実感が薄い。目を見開いてグリグリ顔を押し付けてくるような(実際そんなことをしていたかもう覚えていないけど)演技をされるとこっちは冷めてしまう。これが中年男性ならまだ迫力もあるが、柳楽優弥は若くて童顔すぎる。本作で唯一、柳楽優弥はミスキャストと言いたくなってしまった。
フードやコードも同様に演技過剰なのだけど、こちらはコミカルというよりは軽薄といった印象で、コードなんかずっと泥酔している大学生にしか見えず終盤も何してんだこいつといった感想にしかならないが、そこまで嘘くさいキャラとは感じなかった。邦画なりの現実感は押さえていたという印象。
あと、向井理の砂川が静まり返った事務所で大声を出したシーンは、本来なら立場の高さや周囲への威圧を感じ取るべきなんだろうけれど、演技過剰もあって、なんだかギャグで滑り倒したかのような気まずさを感じてしまった。
ジャッカルのギャグで笑うシーンも、一拍おいてから笑うのがいかにも嘘くさい。原作とかでどんな笑い方だったか記憶にないけれど、佐藤はジャッカルで本当に笑っているのだから、ギャグにかぶせるくらいでいいのではと思うけれど、邦画のリズム的には一拍おくのが様式なんだろう。一拍おいたリアクション、邦画でよく見るので。
個人的に漫画の実写化に求めるのは、漫画を実写に落とし込むことであって、実写が漫画を真似しているような(結果的にコミカルになってしまう)描写ではないのだけど、邦画はもう様式自体がコミカルになってしまっている気がする。そういうのが合う作品もあるだろうけれど、今作ではあまりハマっていなかった。

ただしゴールデンカムイであればこういう演技はハマると思う。
その点ではあまり心配はないのだけど、個人的に心配なのはポリコレ的な部分であり、特にアイヌ関連の描写を真摯に制作できる環境は邦画業界の中に存在しないような気がするのだけど。インディー映画ならともかく。
アシリパにアイヌルーツの配役をしろとまでは言わないが、意外とアイヌ差別(や沖縄差別などその辺)が本土日本人の価値観に未だ残っていると感じることが最近たまにあるので、そのあたりが露呈する結果にならないかという不安がある。

金カムに話がそれてしまった。なんにせよつまらなくはなかったので、ファブル2もプライム特典入りしたら見ようかと思う。