シン・仮面ライダーを観た。
終始「自分は何を見せられてるんだ??」と思いながら見ていた。ごめん。良さをほとんど見出せなかった。上映後に拍手が起こっていたので面白かった人はけっこういると思う。
(追記:確かに拍手は起こっていたのだけど、バルト9の初日2回目上映で中年男性オタクで満員の劇場の中数人だけが拍手をしているという状態だった。
通常このような場合だと拍手が起これば空気に流されて愛想で全員が拍手をするものなので、状況としては「拍手ムードにしたくて必死に拍手する数人」と「意地でもついて行こうとしない多数」という、かなり異様な状況だったと言える。
なのでちょっと上記の書き方だと劇場が拍手で包まれたみたいな受け取り方ができる表現になっていたので訂正する。「上映後に数人が拍手をしていたので、面白かった人もけっこういると思う」。ただし、上映後の拍手の状況や話し声の内容からするに、意地でも拍手したくないくらいつまらないと思った人も相当数いたのだろうと思う。
拍手くらい愛想でしてあげればいいのにと思ったけれど、自分も拍手しなかったので人のことは言えない。つまらないと思ったものに拍手をするのは、相当劇場が拍手で満ちないと愛想でもやりづらいものがある。拍手しなかった大勢はみんなそんな気持ちだったのかもしれない。)
以下ネタバレ配慮はないので注意。
とは言いつつ、とくにこれ以上言いたいことはないんだけど、頑張って詳細を書いて膨らませる。作中描写についてはなにぶんうろ覚えなので間違いがあるとは思う。
自分は仮面ライダーについては全然知識がないと言っていい。平成ライダーはいくつか通して見たし、仮面ライダードライブの映画にエキストラで参加したこともあるけれど、それは今作には関係ないだろう。
鑑賞前の期待値的には、けっこう低めで臨んだ。シン・ウルトラマンが昨年見た中でワーストだったので。事前の期待値と楽しみ方さえ間違えなければどんな映画もある程度楽しめるはず。
その点、今作の楽しみ方を自分は間違えていたんだと思う。今作を見るにあたっては、チープさや子供騙しをシリアスギャグとして笑い飛ばすのが唯一の術だったんじゃないか。シリアスな映画だからシリアスに楽しもう、いくらチープでもこちらから譲歩して真面目に観ようとしたのがよくなかった。
端的に言って、チープな映画を笑うつもりで観るべきだった。鑑賞中に方向転換できなかったのはこちらの落ち度だ。
シン・ウルトラマンはその点、まだ子供向け特撮くらいの見応えはあった。ストーリーは極めて貧弱だったけれども、少なくとも真面目に見るのが馬鹿らしくなるようなシーンは……まあけっこうあったな……引き合いに出すのは間違いだったかもしれない。
冒頭、小屋の中で緑川親子と本郷が対話するシーンからして既にもう違和感が溢れ出てくる。カメラワークというか、画面がなんだかおかしい。話者がとにかくこちら側に向かって話すので落ち着かない。あとなんだか画質?画角?も変な気がする。
こんな感じで明確に言語化できないのだけど絵的に違和感の強いシーンが全編通じて存在する。このあたり、思うに絵コンテ段階で明確な意図を作品全体に通しているんじゃないかという気がするのだけど、何も知らない自分が映画を見ている分には、ただのノイズとしか感じられなかった。
ルリ子やクモオーグをはじめ、どのキャラも決まりきった口癖をやたらと繰り返すのですぐに聞き飽きてうんざりする……というか、持ちネタを加減なく繰り返す痛い人ばかりに見える。シン・ウルトラマンのメフィラスも口癖が話題になったけれど、あれも加減間違えるとこんなにウザいんだという悲しい発見が今回あった。これが庵野節というやつなのか。
モブショッカーのスイカ割りシーンやクモオーグ戦は、カメラがやたら忙しくカットが細かいのと昭和オマージュ描写で場面飛んだりするのを入れ込んでもそこそこ満足度があった。ただこのくらいのアクションなら普通にテレビ特撮でも見せてくれるので、特筆すべきところでもないのかもしれないけれど、この映画の中では特筆すべきところだと思う。他のアクションシーンが大体ひどいから。
コウモリオーグ戦は本当にひどかった。まあ特殊メイクは(これも大概だけど)ひとまずいいとして、飛んでるCGのほう、コメディならわかるけどこの映画一応シリアスですよね!?このあまりにもチープな感じ、ひょっとしたら自分の知らない昭和オマージュなのかもしれないですけど、日本のシネコン大スクリーンで真面目な映画としてお出しできる絵面じゃない気がします。
本郷と一文字が工場地帯で走り飛びながら戦うシーンもあまりにもチープすぎて、これも自分の知らない何かのオマージュなのかもしれないが、未熟な人形劇を見ているような生暖かい気持ちにさせられる。
肉弾戦がアニメチックなテンポで行われるのは見ていて気持ちがいいのだけど、2人のアニメを背景に重ねて移動させているだけというのは気持ちが上がらない。コウモリほど見苦しくはないけどやはりチープ。
コウモリオーグ戦もこれも、空中戦を行った結果どうしようもない状態になっているので、わざわざ空中戦しなければよかったのにと思わざるを得ない。
ハチオーグ戦やバッタオーグ戦もCGがチープだったりはしたのだけど、それらは最低限楽しめるレベルだった。特撮を見るのにチープなCGにケチをつけていては楽しめないので、そのあたりはきちんと予めハードルを下げている。下げているのだけど、やはりそれにも限界はある。
イチロウことチョウオーグこと0号は圧倒的な強さを誇るラスボスだけれど、アクションも物足りないし戦闘の展開も不可思議だ。青い光(プラーナ量の描写?)で1号2号を簡単にねじふせていたにも関わらず、その後なぜか演舞風の妙な動きで肉弾戦を始める。それが少し続くと露骨にバテはじめて息が荒くなり1号と取っ組み合いになる。
なぜ弱くなっていくのか見ていて不可解だったし、最後のグダグダのライダーレスリングに至っては、本当に何を見せられているんだという気持ちで見ていた。削りあった結果の満身創痍の戦いだったら盛り上がるのだけど、0号は一人で勝手にバテているだけにしか見えないため、グダグダという印象になる。
総合してアクションシーンは、寄りでカメラをやたら動かしたり細かいカット割りをしたりしてよく見えないか、引きでチープなCGを露骨に出してしまいがちだった。
そうした特徴を除いても、良いパートでもテレビ特撮レベル以上のものはなく、昨今のアクション邦画とは比べ物にならない、極めて物足りないクオリティのアクションだったと思う。
ちなみに暗いアクションシーンも多かったけれど、自分は暗いシーンはイケる口なので大丈夫。
ストーリーに関しては、まず物語以前の問題として、あまりにも人間の描写が微妙というか、セリフがどれもこれも上滑りしていて、決まったセリフを喋らされている俳優にしか見えない。一つの人格ある人間と感じられず、口癖を異様に繰り返すのもそれに拍車をかけている。
役者がどれもこれも半ば棒読みなのはそういう指示なのだろうと思うけれど、やはりそれもただの棒読みにしか見えない。
気持ちの入っていない人間が気持ちのこもっていないセリフを喋るストーリーにどうのめり込めばいいのかなと思う。
キャラクターの中では本郷が比較的感情のある人間に感じられたけど、唯一感情的な演技をするキャラだったからかもしれない。
物語自体は、説明的なセリフや設定が多く(おまけに一部セリフが聞き取りづらいつーか聞こえない)わかりづらいのを抜きにしても、ショッカーが絡んだ家族の問題に巻き込まれた本郷、という構図で理解できる。
それが面白かったかというとうーん……。
やっぱり緑川家の人間描写がどれも微妙なのが痛い。ルリ子に至ってはほとんど本郷を食う主役級の扱いで、あれだけ喋ったり、この映画では珍しく感情を表に出したりするキャラなのに、どうしてもセリフ読みをする役者にしか見えない。
イチロウが心変わりをした理由も全然わからない。これは本当に急に心変わりしていてびっくりしたので、何か見逃したのかもしれない。1号の仮面を被ってルリ子に再会した瞬間めちゃくちゃ態度が柔らかくなっていた気がするのだけど、そもそもルリ子とも一応仲違いしていたはずなのに、なぜ……。
一文字は本郷を受け継ぐ者として役割をあてがわれているけれど、一文字本人の掘り下げがほとんどなくどんな人物かほとんど分からないので、役割が先にたったキャラという印象がある。孤独感を抱いている、つまり信頼に飢えている、ような雰囲気はあるので、そのあたりもう少しハッキリしてくれていたら違ったかもしれない。
斎藤工と竹野内豊については深く考えないことにしました。タキとタチバナだっけ。シンシリーズで馴染みのある俳優でも今作ではひたすら無機質なだけの役なので、単なるスターシステムのファンサービスとだけ受け取っておきます。
あとあのロボットはなんだったんだ。いなくても良かったんじゃないかと思うくらい役割がなかったけど、なにか元ネタがあるのかしら。
英語だけ流暢な人工音声になるの完全にギャグですよね多分。作品のシリアスなトーンにまるで合ってなかったけれど。そんなこと言い出したら怪人たちもか。
怪人に関してはクモオーグとバッタオーグ以外いない方が良かったんじゃないかなと思う。コウモリとサソリとハチは見ていてけっこう苦痛だった。ダサいし、キャラとしてキモい。あとイチロウもかなりキモかった。こういうのってギャグでやってるのかな。笑っていいなら笑えますけど……。
この映画とにかく何もかもがダサいんだけれど、唯一イカしてるのが仮面ライダーの造形とバイク。
バイクで疾走するシーンはバイクの変形も含めてカッコよかったし、ベルトでプラーナを吸収したりライダーキックをしたりするのはもはや様式美というか、伝統的なカッコよさがある。
シン・ウルトラマンには米津玄師の主題歌があったけれど、今作は聞き馴染みのある歌だけで終わる。作品のファンからすればこちらの方がいいのかもしれないけれど、個人的には、過去の作品から歌を拝借するなら、過去の作品に恥じないエンターテインメント作品であって欲しいと思う。じゃないと鑑賞後の余韻がただの懐古で終わるから。
そんな感じでした。
ここ数年観た映画の中ではちょっと抜きん出てビリッけつですね。ショボさとダサさと不可解さと上滑り感でずっと困惑してた。2回目観る機会があれば、その時は笑いにギア変えて観るので楽しめるとは思いますが。
なんだろうなあ、シン・ウルトラマンといい、大人向け特撮ってやっぱダメなのかも。子供向けより子供騙しな気がします。
コラボ商品やキャンペーンでガチガチに宣伝して日本中のシネコンで大量のスクリーン使って上映するような映画ではないんじゃないでしょうか。大怪獣のあとしまつでも似たようなことどこかで言いましたが、今作を見たあとでは、あれでもシネコンにふさわしかったのかもしれないと思えてきました。
観ながらと観た後に思ったことを付け加えると、「シン・ウルトラマンの悪いとこ全部濃縮されてる」だった。まあ、不快な性的シーンはなかったか。全部ではないな。