シン・仮面ライダーは、色んな感想を眺めていると、極めて人を選ぶ映画だと思う。
自分は初日に行ってここ数年観た映画の中でワーストだと感じた。
一方で大傑作だと言う人も多いし、怪作だと言う人もそれ以上に多いかもしれない。個人的には、怪作という表現は駄作をオブラートに包んだものではないかと思わなくもないのだけど、自分も本作を駄作と言い切ることはできない(もっと遥かにひどいものを見たことがある)から、まあ気持ちは分かる。仮面ライダーや特撮へのリスペクトは強く感じるので、そのような真剣さを感じる作品はいかに首をひねる出来であっても怪作とかカルト映画とか言いたくなるものだ。はなからやる気のない駄作とは違う。
と、そんな評価の分かれる本作ではあるけれど、これから観に行こうと思っている人も多いだろう。仮面ライダーに関心がさほどなくても、大々的に宣伝をしているシネコン展開アクション邦画ということで、なんとなく観に行く人も多いに違いない。
そこで、こんなところを見に来る人はいないと思うのだけど、自分の反省も込めて、本作を観るかどうかの判断基準、本作を楽しむためにはどのような心構えで臨めばいいか、というところを、非オタクにも通じるように書いてみようと思う。
まずは本作を見て楽しめそうな人、リスクの高い人を挙げる。このあたりは他の人の感想も参考にしている。
・シン・仮面ライダーを観て楽しめそうな人
特撮ならなんでも許せる人
仮面ライダーならなんでも許せる人
大人向け特撮を楽しく観られた事がある人
出演俳優のファンな人
浜辺美波の顔が好きな人
TV版初代仮面ライダーや漫画版石ノ森仮面ライダーを履修済みの人
庵野作品ならなんでも許せる人
エヴァが好きな人実写版キャシャーンが好きな人
(追記:これを書いた時は実写版キャシャーンを未鑑賞であり他の人の感想を鵜呑みにしてこのように書いたのですが、鑑賞した結果、実写版キャシャーンの好き嫌いは全く関係ないなと思ったので取り消します)
・シン・仮面ライダーを観るのがハイリスクな人
特撮を観たことがない人(シン・ゴジラは除く)
特撮を子供向けだと思っている人
大人向け特撮を観たことがない、楽しく観られたことがない人
本作にさほど興味のない人と一緒に観ようとしている人
子供を連れて行こうとしている人
PG12、R15の流血描写がキツイ人
画面の点滅がキツイ人
ストーリーを重視する人
俳優の演技力を重視する人
舞台セットや撮影の品質・技術を重視する人
CGの品質を重視する人
アクションの品質を重視する人
シン・ゴジラを期待している人
エヴァを観た事がない人、好きでない人
という感じ。
楽しめそうな人については詳しく説明するのはやめておく。ネタバレを含まざるを得ないので。
リスクが高い人についていくつか説明する。
まず、特撮作品をよく知らない人は、特撮映画というのは一般にアクション以外クオリティが低いものだと認識しておかないといけない。VFXも合成バレバレで、ヒーローや怪人の衣装とかも作り物感がモロに出る。こういう言い方はアレだけれど、どうあがいても子供だましにしかならない。これは大人向けでも変わらない。なのでハードルをそこまで下げておかなければいけない。特撮を見た事がない人はまずこれが抜けていそうなので書いておいた。
子供を連れて行こうとしている人については、大筋は子供でもわかる簡単な作品なのでそこは問題ないのだけど、ビックリしかねない流血描写がけっこうある。単に血が流れているだけとかいうレベルではない。なので怖がる子もいるかもしれない。
あと、なんか色々重視する人を挙げたけれど、要するにこれも上記と同様で、特撮に普通の邦画と同レベルのクオリティを求めてはいけないということ。アクションについてさえ、アクションがウリの邦画と比べると見劣りするので、期待しないこと。子供だましと思って見に行くほうがいい。
シン・ゴジラは違ったと思うかもしれないが、あれは例外だと思ってほしい。
で、ここまで読んで観ようと思っている人がいるとすれば、観て楽しめそうな人か、ハイリスクな人に当てはまっていない人か、ハイリスクな人に当てはまっているけれど色々覚悟して観に行こうという人だと思う。
次にハイリスクな人が観に行くにあたって気になることや気をつけること、心構えについて書いていく。
・予習はいらない
色んなことを言われていると思うので、仮面ライダーを初代とか漫画版とか予習しておかなければならないのではないかと思っている人もいると思う。
普通に必要ない。見ていなくてもわかる。自分は予習抜きで十分理解できたし、予習しなかったことで評価が下がったようなことはない。
強いて言えば、元々の仮面ライダーは悪の組織ショッカーに改造されたバッタ人間でバイクに乗るヒーローだ、くらいの知識があれば前知識としては十分だと思う。
もちろん、初代や漫画版を見ていればオマージュの小ネタが楽しめるかもしれないが、あくまで小ネタでしかないと思われる。そういうのは、順序が逆でもいい。映画を見てから答え合わせでもいいと思う。
・ストーリーは難しくないが説明を聞くこと。あと子供向け
評判を聞いて、オタク向けで難解な作品と思う人もいそうだけれど、上述したように大筋のストーリーは難しくない。逐一ちゃんと説明してくれるので素直に話を聞いていればわかる。ただ、説明が多くて疲れるかもしれない。
オタク向けの小ネタとか込められたテーマみたいなのは確かに存在するけれど、汲み取れなくても本筋は楽しめるようなストーリーになっているので全く問題ない。
ただ、特撮にありがちな謎の展開や、「スルーされてるけどあれどうなったの!?」みたいなのはある。そういう「説明されない」のは悪い言い方をすれば子供だましの部分なので、特撮ってそういうものなんだとしてスルーしていい。
あと、特撮を見に行くのにこんなことを言うのもなんだけど、ストーリー的には子供向けというか、セリフ含めてちゃちいところが多いので、そこも子供向けレベルにハードルを下げておくのがオススメ。大人顔負けのリアリティみたいなものは全くないので、ともすればカッコつけだけのお遊戯会に見えかねない。
とにかくストーリーはちゃんと説明してくれるので、説明さえ聞いていれば振り落とされることはそうない。そのストーリーが面白いかは別として。
・映像作品としてのクオリティに期待しないこと
繰り返しになるが、あらゆる面でクオリティは低い。CGもセットも演技もアクションも、衣装以外の全てが。衣装も一部微妙。音楽も旧作から引っ張ってきた古い曲以外はパッとしない。
特撮云々以前に映像作品としてのクオリティが異様に低いと自分は思った。自分が楽しめなかったのはとにかく基本的なクオリティの低さに由来するので、そこさえ気にならなければ楽しめると思う。なのでハードルは極端に下げておいてほしい。
少なくとも、シネコンで並べて上映されている他の映画と比べて、クオリティは段違いに、比較にならないレベルで低い。10年前放映のTV版仮面ライダーと比べても質がいいとは言いきれない。
なので説明セリフをきちんと聞いてストーリーを追うということに集中して観るのをオススメする。
・仮面ライダーのビジュアルをかっこいいと思えること
大前提なのだけど、ぼんやり観に行く人もいかねないので一応書いておく。
こんなところかな。
少しでも良い映画体験になりますように。