11月19日鑑賞。
ゲゲゲの鬼太郎には明るくない。
15年前(15年前!?)にノイタミナでやっていた墓場鬼太郎を観たのが唯一で、それ以前も以後も全然触れてこなかった。墓場鬼太郎の記憶も15年前となるともう全然ない(でも面白かったことは覚えている)。あとモノノケがダンス。
でもコンテンツ自体にはずっと興味はあって、なんとなくいいキッカケがあれば……とは思っていた。
この映画のことは前情報すら全く耳に入っていなかったのだけど、ちらっとツイッターで感想を見かけて、そんな映画が公開されているのかと心に引っかかっていた。

そして休日、たまに無性になんの用事もなく外に出たい時がある。そんな時に映画というのはピッタリで、サクッと観られる適度に興味の持てるものはないかと探したところ、この映画のことを思い出したわけだ。
まあ厳密にはやるべきことはたくさんあったのだけど、家にいるとなんだかやるべきことすらやれずに欲求も不満のままうだうだしているのが目に見えているので、ならいっそいったん放り投げて外に出た方がマシ……ということでもある。

事前の印象としては、ややダークめな作風なのかなと思っていた。
鬼太郎というとダークでふざけた印象と、子供向けヒーローめいた印象の二つがある。今作はどちらかというと前者で、墓場鬼太郎まではいかないくらいなのかなと。絵柄的には墓場鬼太郎よりだいぶシュッとした感じなので。
さすがに目玉おやじと水木らしき人間が主役であろうというのはわかって観に行った。

以下ネタバレ感想。とはいいつつ、書く余裕がなくて観てから時間が経ってしまって忘れたところも多いので、軽めで。

結果から言えば、ふざけた要素はなく、ダークな作風とヒロイックな作風のハイブリッドといった感じだった。
犬神家的な(横溝正史的な?)怪奇・土俗の要素と、妖怪バトルの要素が組み合わさって、他では見られないようなエンタメに仕上がっていると思う。

キャラデザが比較的垢抜けたデザインにされているのも、怪奇とヒロイックさの混じった作風とマッチしていた。
ただ、唯一、猫娘のデザインだけはもうちょっとダーク・怪奇に寄せられなかったものかと思う。今作は近年の子供向け鬼太郎のデザインの方向性を踏襲しているのだと思うけれど(というか子供向け鬼太郎の映画化なのか?)、今作の色調(雰囲気・色彩)の中ではあれだけなんだか世界観が浮いている。
あと、ゲゲ郎のデザインも、作風的にはどちらかと言うと元のごつい大男の方が良かったのでは、と思わなくもない。後日談となるスタッフロールでは結局(病のせいか?)ごつい大男になっているし。ただやはり主要人物はイケメンにしないと売れないのだろうとも思う。怪奇・土俗的なストーリーの雰囲気にもっと寄せて欲しかった気もするが、まあミスマッチという程でもないので、好みの問題か。

キャラクターとしては、やはり水木が秀逸だったなと思う。戦争体験をうまく人格に組み込めていて、特に能力もなく、ヒロイックでもなく、諦念と戸惑いの中で理不尽に抗う微妙な立ち位置がよく作られていた。ゲゲ郎より完全に主人公。
沙代も、都会に憧れて主人公にすり寄る田舎の令嬢というテンプレがあざといながらも可愛らしくて、悲惨な状況とのギャップで見ていて愛着がわいて良かったなと思う。それだけに連続殺人の犯人であることがわかり豹変する展開はショッキングに感じられて効果的だった。
ゲゲ郎もまあ、なんかどうしても目玉のおやじと結び付けづらいキャラ造形ではあったけれど、まあ単体として見ると好きになれるいいキャラだったと思う。

反面、時貞のキャラクターはちょっとアニメチックすぎたというか、立ち位置的には怪奇のど真ん中なのに、やけに表情豊かで変に踊ったりするし、シリアスな展開の中で妙に落ち着きがなく、演技もコミカルで、見ていて集中を乱された。
もっとこうなんというか、泰然自若としていて欲しいところがある。めちゃくちゃ小物にしか見えず、やっていることのスケールとのギャップが激しかった。
時貞が時弥に乗り移って以降、作品のトーンが変になっていたように思う。

あとは、バトルにちょっとミスマッチ感があった。
これはまあ、自分がゲゲゲの鬼太郎とバトルを結び付けられていないというのが原因だろうと思う。陰陽師たちとのバトルが始まった時には、なんか……ジャンル変わったな……と思ったものだ。
子供向け鬼太郎ではこういうバトルがよくあるのかもしれない。

音楽がいい感じだなと思ってたら川井憲次。

そんな感じかな。
個人的にはもう少しヒロイック抑えめの怪奇路線にふって欲しかったものの、けっこう子供も観に来ていたことを考えると、これくらいでいいのかもしれない。いや、これでも子供が観るにはダークで退屈だと思うけれど……実際途中で飽きてるふうな雰囲気を感じたし。
あと、特典の内容については、叶わなかった風景ということで、泣かせにきているなあと思った。

楽しめた度合い★★★★☆(かなり楽しめた)