関心領域を観た。
6月4日、TOHOシネマズアミュプラザおおいたにて。字幕。
(なお、7月3日にも立川シネマシティにて2回目鑑賞。極上音響上映。字幕)
感想というよりメモ。ネタバレほんのり含む。
観る前は、アウシュビッツ収容所の隣に住む家族という前情報と、関心領域というタイトルから、何の変哲もない一般家族がアウシュビッツの壁内の惨劇に対して無関心であることを軸にした映画なのかと思っていた。
実際観てみると、まあ無関心と言えば無関心なのかもしれないが、そもそもアウシュビッツの所長一家であり、冒頭からして捕まったユダヤ人から接収した服をもらってきたりとか、収容所の焼却炉の話を家の中でしてたりとかしていて、ガッツリ事情を知っている感じがあるし、塀の中の音もまあけっこう聞こえるし、めちゃくちゃ家に執着するしで、無関心というよりは全て承知の上で生活しているという感じがある。自分はこういう状況を無関心と表現するのには違和感がある。
終わりまで観てもその点は納得がいかなかったので、後で調べたところ、そもそもこの映画とか原作の小説が出る前から、収容所の周辺の区域が関心領域と呼ばれていたらしかった。つまり、もしかすると、本来のタイトルの意味は関心の領域といった抽象的なものではなくて、アウシュビッツ隣接エリアくらいの意味だったのかもしれない。そちらの方がしっくりくる。
家や庭でのシーンは終始塀の中から聞こえる音や声が環境音として聞こえてくる。画面の中のなんでもない暮らしや会話が続く一見退屈なシーンだけれど、塀の中の音とともにあると、塀一つ向こうの惨劇を想像しながら見ることになり、独特の緊張感が生まれる。と同時に、それらを環境音としてこともなげに暮らしている登場人物たちの異常性にもまたハラハラする。特別なことは起こらないし、塀の外ではあるけれど、ここにあるのもまた異常事態なのだ。だから関心領域の外から来た人間には耐えられないのかもしれない。
そしてだんだんと塀の中の音がはっきり聞こえてくるようになる。
ネガで映されるシーンの緊張感も良かった。
音楽のほとんどない映画だけれども、数少ない音楽が秀逸で、こちらの不安を煽ってくる。オープニングはもちろん、劇中では音楽とも音ともつかない嫌な音が響く。
エンドロールの音楽も良い。エンドロールの音楽でここまで衝撃を受けたのは、自分の中ではダーク・プレイス以来だ。
話としてはとくに取り立てて何か大きな出来事が起こるわけではないのだけど、不思議とヘス一家の行く先が気になってしまう。
観客が現代のシーンで初めて塀の中に何があったかを知ることになる構成はうまいと思った。
とりあえず星四つ。かなり面白かった。
★★★★☆