雑記
ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディを観た

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディを観た。7月13日と7月15日。大分シネマ5にて。字幕。

2回見た事からも伝わると思うけれどかなり良い映画。(まあ2回目は付き添いだけど、自分から勧めたようなもんなので)
70年代を舞台としてレトロタッチで緩やかに穏やかに紡がれる優しい物語。なので劇的な盛り上がりを求める人には向いていないかも。
小さな秘密が明かされたり、非日常的(タッチは日常的)な環境下で互いを思いやったりしながら、各キャラに少しづつ変化が積み重なり、次第に大きな変化をもたらしていく。
自分の理解は浅いとは思うけど、概ねそんな感じの映画。

今作の個人的MVPはアンガス・タリー役のドミニク・セッサ。整った顔に長身細身のルックスが魅力的なのはもちろんのこと、憎たらしく大人ぶってみせる反抗的な子供の顔から、幼い無邪気な子供の顔まで、そのグラデーションを見事に演じ分けてみせている。カメラの前に立つのも初めてというのが信じられないのだけど、映画は総合芸術なので、その助けもあるとは思う。

自分の中ではこの映画の軸にあるのはそれぞれのキャラの悲しみ、孤独に寄り添う物語だと思っていて、とりわけその中でも子供に対して大人が負う責任というのが主に描かれているように思う。子供が大人に学ぶように大人も子供に学んで変化していく物語ではあるのだけど、最大のキーになるのはやはりアンガスに対して大人がどう向き合うかだ。
まあそういう意味で、ホールドオーバーズは実質ブルーアーカイブ、なんて誇張オタク構文をツイートしてしまったのだけど、さすがにズレすぎかと思ってすぐツイ消しした。

面白さはまあ、とりあえず星四つかな。
★★★★☆

密輸1970を観た

密輸1970を観た。7月15日、大分シネマ5bisにて。字幕。

予告を見た印象として、気楽に楽しめるエンタメ作品だろうなと感じて観に行ったら、実際その通りの映画だった。
その通りというか、思ってたよりも軽くて、言語さえ日本語であれば、コメディ混じりの邦画アクション映画と言われても何も疑問に思わない気がする。
個人的には韓国映画には日本映画と違うものを求めているので、邦画と似たタッチの作風なのは若干期待はずれという印象。

水中を含めてアクションは見応えがあって緊迫感もあるし、ストーリーも二転三転して面白い(というか二転三転する上にそれぞれの思惑が絡まっててよくわからない)。
ただ、ある程度好きになれるキャラクターがマジで一人もいなかったので、ちょっと引いた目線で見ることになってしまった。

あと、1970年代の韓国の雰囲気ってこんな感じなんだ〜という面白みもあった。

星三つくらい。
★★★☆☆

クワイエット・プレイス:DAY 1を観た

クワイエット・プレイス:DAY 1を観た。7月14日、TJOYパークプレイス大分にて。字幕。

待ち時間に鑑賞。クワイエットプレイスシリーズは完全に未見で、音に反応するモンスターが襲ってくるホラー映画という認識くらいしかなかった。

ホラー・モンスター映画としてはそこそこで、特別これが感情に響いたというものはなかったものの、十分怖がることができたし、主人公の末期癌患者サミラを軸にしたストーリーもとても良かった。日々激痛と死の恐怖と戦っている主人公の極限状態での選択が本作を普通のモンスター映画とは違うものにしていると思う。
いわゆるビックリ演出がけっこうあったのは気になるけど。

ただ、この映画については主人公の猫の結末について致命的なネタバレをSNS上であらかじめ食らっていたのが痛かった。猫の運命についてもどうなるのかハラハラしたかった。
動物が酷い目にあうかどうかが観ない理由になり得る人に対して、良かれと思ってネタバレをしたようだけれど、関係ない人にとってははた迷惑だなと思う。

面白かったので星三つくらい。
最近星三つくらいが多い気がする。自分の中の基準が変わってきたのかもしれない。
★★★☆☆

数分間のエールをを観た

数分間のエールを、を観た。
7月3日、立川シネマシティにて。極上音響上映。

直前までこんな映画があることすら知らなかったのだけど、前日にアンパンマンを観に行った際、シアター内にサイン入り看板が飾られているのを観て、気になったので鑑賞。
ネタバレ薄めでダラダラと思ったことを書く。一応観る前に読んでも大事なとこ全部ネタバレされてるとかにはならないと思う。

観終わって、面白かった……と自信を持って言えない。いや、つまらなくはなかったのだけど。まあでも、多分面白かったかな。うん、面白かった。

主線の少ない2Dルックな3Dアニメとして、映像には独特の質感がある。初見だとちょっと違和感を感じるかもしれないが、映像だけでも楽しめる。聞けばblenderで作ったらしいので、そういう意味で新鮮味もある。
まあ、主人公の彼方のキャラデザ(顔)が好きじゃなかったけれど、夕先生の顔が良かったのでトントン。
音楽も後で触れるけど邪魔にならず、挿入歌は物語にも合ってて良い。

ただ、それ以外がどうも……というか具体的にはお話がちょっと……没入できないというか、冷めてしまうというか。
自分ではほとんどないことなのだけど、上映中にダルくなって時間を確認してしまった。

どんな映画だったのかというと、まあ悪い言い方をしてしまうと、露骨なクリエイター賛美作品といった感じ。
この作品にピッタリの感想がしばらく思いつかなかったのだけど、一時間かけた専門学校のCMみたいな感じだ。独特の映像の質感もあいまって、よりそんな感じ。

全体的にクリエイター讃歌を作るぞという強い意志を感じて、それがセリフや筋書きに表れている。のだけど、意志が強すぎて、セリフは口数が多く説明的なところと上辺を撫でるようなふんわりした感じになっているところがあるし、ストーリーも類型的なところがあり、展開から先に考えてキャラクターを役割に押し込めたような強引さを感じる。

セリフの一例を挙げると、「作ったもので人の心を動かしたい」というようなことを何回も口にするのだけど、人の心を動かすということが具体的にどういうイメージなのか、なぜ人の心を動かしたいのか、というのをしっかり提示してもらえてないからか、ふんわりした空虚なセリフに感じる。セリフだけが先行していて、そこからキャラクターの内面・イメージをつかみ取れない。公式あらすじでもタイトルっぽく使われているあたり、おそらく「作ったもので人の心を動かしたい」というのは今作のパンチラインの一つなんだろうと思うけれど、パンチラインだからといって機械的に入れてしまってる気がする。
自分もクリエイター賛美に傾倒した時期があるから思うのだけど、「作ったもので人の心を動かしたい」というのは一番格好がつく創作動機ではあるので、クリエイター賛美の作品でそれを使いたい気持ちはわかる。でも実際はシンプルな承認欲求とか、具体的な目標とか衝動があるもので、単に「人の心を動かしたい」というのは実際は何も言っていないに等しい。もしそう言いたいのであれば、上述したように、どう動かしたいのかなぜ動かしたいのかを明確にしておかないと、単なるカッコつけになってしまう。

そういうぼんやりふんわりしたセリフがある一方で、説明的なモノローグが細かく挿入されていて、セリフで伝えるぞという意気込みがすごい。こういうモノローグの使い方、CMとかでよくある。テレビから目を離しても内容がわかるやつ。

ストーリー展開も、まあ見え見えなので書いてしまうけど、中盤で彼方が挫折してしまう展開がある。それ自体はありふれたものだからいいのだけど、挫折する原因がにわかに信じがたいものとなっており、挫折させるという展開のために無理矢理キャラクターを動かした感が否めない。まあこれは彼方をMV作家にした時点でちょっと無理があったのかもしれないけど。
夕先生はとにかくストーリーの都合で不可解な行動を終始とり続けており、教師設定からしてかなり無理があると思うのだけど、ひょっとして学校で「あっあんたはあの時の!」展開をしたかったがために無理矢理教師にさせられたんじゃないか。知らんけど。

また、クリエイターを賛美するのは別にかまわないのだけど、作中の制作描写がどうも地に足がついていない感じがする。
MVは高校生が一人で短期間で二作並行して作るには無理のあるクオリティに見えるし、制作風景も特殊な空間でSFチックな操作パネルを使いサクサクと制作する比喩的演出がある。通常の制作風景ももちろんあるけれど、これといって印象に残らなかった。
全体的な印象として、MVにしろ歌にしろ、創作の泥臭いプロセスをすっ飛ばして結果だけを提示して「モノづくり」と言っているように見える。
泥臭い部分が描かれるのは外崎のスケッチブックくらいで、今作の「モノづくり」で唯一説得力のある動きをしているのが脇役の外崎、それもそんなに掘り下げて描かれない。

モノづくりという言葉が頻出するけれど、映像・音楽・絵画の分野で創作行為をモノづくりという言い方はあまりしないんじゃないか。知らんけど。(作っている人達は当然その分野の人たちなので本当にそう言うのだろうか……)
なので作中「モノづくりの世界で」というセリフが重要なシーンで言われるのだけど、そんな言い回しする!?という驚きだけが来て感動も何もなかった。
自分は分野が全く異なるのでわからないが、モノづくりなんてワード、メーカー向け就活の時にしか使った記憶がない。

モノづくりを続けるにしろ諦めるにしろ、作中全編に漂うモノづくりへのあまりにも無邪気な信頼が、モノづくりに携わっている人の視点と言うより、これからモノづくりを志す人の憧れの視線に近いと思った。映画を作っている人達は前者のはずなのに不思議だ。

ライブの際の描写についていくつかちょっと違和感があって(あんな通路長いの見たことないってのは誇張演出なので置いといて)。
例えば、外崎が夕先生をトリの前座扱いだと言うのだけど、ああいうブッキングでOAと特に書いてない限り、前座扱いだと思ってる人は普通いないと思う。そりゃアンコールはトリの出演者にかかるけどさ。まあ外崎はライブ来たことないような雰囲気だった気もするから、そういう認識でも不自然じゃないか。
ライブ中の客についても、夕先生の出番であれだけの密度で人がいるということはそこそこ人気があって固定ファンもついているはず。画面外でアホほどヘドバンかジャンプしてるようなファンが一人くらいついててもおかしくない。なんか劇中では箸にも棒にもかからなかったみたいな扱いなのでギャップを感じた。映画の中では人気の指標として主にYouTubeの再生回数やコメントが映されていたけれど、YouTubeの再生回数だけじゃなくて目の前の人を見よう。目標とモチベによるけどさ。(まあその辺はっきりしないから夕先生が音楽やめるも続けるもふんわりしてるんだけど)
どうでもいいけど100曲も作ったならライブでやれる曲だけでもレパートリーかなりありそうだし、ファンから音源化を待望されていそう。

モノづくり賛美の作品ということで、音楽についても触れておくと、音楽は挿入歌以外特に印象に残らなかった。別に悪いことではない。作品に溶け込んでいたということで、邪魔するより100倍マシだ(邪魔だったルックバックを思い出しながら)。
挿入歌はどれも良かった。記憶が確かなら「未明」以外に2曲流れたと思うのだけど、もうちょっとしっかり聞かせて欲しかった。サブスクで聴き直してみているのだけど、「ナイト・アンド・ダーク」なんてイントロしか流れなかった気がする。あれ、「ナイト・アンド・ダーク」じゃなくて「ある呪文」の方か?ていうか「未明」以外に4曲もあるじゃん。記憶力……。
挿入歌の中だと「ある呪文」がちょっと昔のポップ感があって一番好きかも。「アイデンティ」とかめっちゃボカロP感ある。いや夕先生の挿入歌担当のVIVIさんはボカロPだから当たり前だけど……。
ただ、歌自体はいい歌だと思うのだけど、こう言ったらあれなんだけど、劇中で地道にライブとかしてて売れないのも納得してしまう感じの作風だった。というかこういうジャンルの歌が跳ねるためにはどこでファンを集めたらいいのかわからない。昔はこういうジャンルは下積み時代がよく見えないままいきなりメジャーデビューとかしてたようなぼんやりした印象。今時はボカロかなんかで作って音源をMV付きでネットにアップするのが王道な気がする。そういう意味で、映画のストーリーにはかなり合っていると思う。(歌と関係ないけど、やたらセンチメンタルなライブMCもなんか売れなさそうという感じがしてしまった)
ちなみに夕先生はアップされたライブ映像が伸びないのを気にしていたふうな描写があるけれど、ライブ映像はね……伸びないぞ……。この作品のそういうとこはしっくり腹に落ちる。

エンドロールのフレデリックの主題歌は、作品に雰囲気がよく合っていたと思う。
まあ、そこは夕先生の歌で統一するべきだろ、特にエンドロールは、という意見も多分ありそうだしよくわかる。
ただ、別にこれで悪いとは思わない。この作品の鑑賞後の余韻にはこれはこれで合っていると思う。まあ、夕先生の歌だった方がベストだとは自分も思うけど……。

まあ色々書いたけど、なんだかんだ楽しめたということで一旦星三つ。
★★★☆☆

悪は存在しないを観た

悪は存在しないを観た。
7月2日、立川シネマシティにて。

率直な感想を言うと、面白かったけれど、嚙み砕けない。
自然現象を見せられたような気分になる映画だった。

ついつい、この物語は何が原因でどうなったのかについて考えてしまうけれど、それも悪は存在しないというタイトルにとらわれているような気もする。
もっと不条理な話かもしれない。

ネタバレ抜きで話しづらいので、あんまり書くことがない。
話としては、グランピング場の住民説明会以降グッと面白くなる。いやこういう場って胃が痛いからあんまり見たくないんだけど。

あと気になったところは、この町はあまりにも子供の扱いが雑すぎると感じる。遊び方が危ない。大人もそれを注意しない。
うどん屋についても、そんなとこで汲んだ水で作るうどんは美味いんか?衛生的にどうなん?変な物質入ってないか?という気もする。鑑賞後、ここのうどん美味くない説を見かけて笑った。

主演の人の棒読み演技が最初は気になったけど、キャラクターに合っていて良かった。

まあ星三つかな。面白かった。
★★★☆☆

映画それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルンを観た

映画それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルンを観た。
7月2日、立川シネマシティにて。

普段アンパンマンは見ないというか、子供の頃でさえアンパンマンをろくに見た記憶がないのだけど、良作と聞いたので観に行った。
しかし冒頭で脚本米村正二と出てきて警戒レベルが上がる。昔プリキュアを見ていた身としては、米村脚本は警戒の対象だったのだ。微妙な時だいたい米村脚本だったから(なのでスマプリはあんまり好きじゃない)。

まあ結局それは杞憂で、普通に面白かった。もちろん子供向けという前提でかなりの譲歩は必要だし、よくできた話とは言いづらいけれど、見るべきところはあった。
ばいきんまんというキャラクターを掘り下げる(設定をではなくキャラクター性を掘り下げる)作品で、ばいきんまんに肩入れしてしまうタイプの子供だった自分もニッコリ。

子供の頃の自分がばいきんまんになぜ肩入れしていたのかというと、アンパンマンはナチュラルボーン暴力で戦っているが、ばいきんまんは努力と苦労の末に作り上げたメカで戦っているからだ。さすがにメカが無から生まれないのは子供だってわかるし、ばいきんまんの実力はメカを使ってでしかアンパンマンに太刀打ちできないレベルなのもわかる。
ばいきんまんが悪いのはわかっているが、手間暇かけて作り上げたであろうメカで挑むも、生まれ持ったアンパンチ一発で吹っ飛ばされる無情な構図があるのもまた事実だろう。
ばいきんまんは頑張っているのにアンパンマンは……という気持ちがあったことは否定できない。いやアンパンマンは暴力以外のところで頑張ってるんだけどね!?

そういう感じだったので、今作のばいきんまんは解釈一致。

今作の敵「すいとるゾウ」はとにかくめちゃくちゃ強い。どうやって倒すんだよこんなの……と思わせてくれる強い敵はストーリーの先が読めなくて好き。
敵の正体もその扱い方もすごく良かった。

よく出来た話に見えづらいところは、全体的に物語的な構図としてのエモさに特化していて、「どうしてそうなったのか」の説明を多分あえて省略したんだろうなと思う(子供向けでそこ掘り下げても尺の無駄だとは思う)。

どうでもいいけど、冒頭で踊るカバオを回り込みながら撮ってるシーンだけ作画がヤバいくらい良くて、今作ベスト作画はあそこじゃないかと思うのだけど、あそこがベストでいいのか?

惜しむらくは劇場が自分ともう一人しかいなかったことで、これはやはりお子様が見に来る休日に見た方が良かったなと思った。それ狙いでもう1回見ようかな。

いちおう星三つで。面白かった。
★★★☆☆